拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

6年前の梅雨の日

あなたへ

 

6年前の丁度、今頃の時期を思い出していました。

 

あの年の梅雨には、

あの子が生まれて初めて見たものがありました。

 

星が飛んでいるみたいだね

 

小さな子供みたいに大はしゃぎで、あの日のあの子が見つめていたのは、

ホタルでした。

 

あれは、あの子がまだ幼かった頃に、

あなたが一度だけ連れて行ってくれた公園での思い出。

 

ねぇ、あなたは知っていましたか。

 

家族3人で、あの公園へと遊びに行った日は、

高い場所にある長い滑り台のあたりで過ごしたけれど、

そこから下に降りて行くとね、お散歩コースがあって、

この時期には、紫色の綺麗なお花が咲いているんだよ。

 

花の名前に疎い私は、

あのお花が何という名前の花なのか、分からないけれど、

あなたならきっと、知っているんだろうな。

 

6年前にあの子と2人で見た景色を思い出しながら、

今日の私は、あなたのその手に触れたくなりました。

 

あなたと手を繋いで、

あの公園を散歩してみたかったなって。

 

もしも、あの夏の運命が違っていたのなら、

私の記憶にあるあの子と2人で見た景色は、

全部、家族3人で見た景色へと変わっていたのでしょう。

 

6年前の梅雨の日の思い出の中に、もしもあなたがいてくれたのなら、

この梅雨のあなたは、

息子ロスになって元気のない私を、誘ってくれたのかも知れませんね。

 

今日は、仕事を早く切り上げて帰るから、一緒にホタルを見に行こうかって。

 

暗い公園の中、手を繋いで2人でゆっくりと歩きながら、

私たちはきっと、そこで見た同じ記憶を辿ったのよ。

 

長い滑り台にはしゃいだ幼かった頃のあの子の笑顔。

星が飛んでいるみたいだねって、はしゃいだあの子の笑顔。

 

私たちの記憶に蘇るのは、

2人で見つけたたくさんのあの子の笑顔なの。

 

あの夏から9つの年を重ねたあなたは、どんなあなただったのだろう。

 

その姿を上手く思い浮かべることは出来ないままに、

それでもきっと、大きく逞しいその手は、あの頃のまま、

何も変わらずに、

私の手を優しく包み込んでくれたのでしょう。

 

あの夏がどんなに遠くなろうとも、

しっかりと自分の前を見据えて歩んでいようとも、

時々には、あなたの温もりが恋しくなって、

不意に思い描いてしまうよ。

 

もしも、あの夏の運命が違っていたのならってさ。

 

 

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