拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

そちら側のあなたと喧嘩をした日

あなたへ

 

あの子と2人で、あなたのものを整理した日のことを思い返しながら、

そして、箱の中を改めて見返しながら、

思い出していたのは、あの日のことでした。

 

こうして改めて振り返ってみても、

あれはやはり、たった一度だけ、

そちら側のあなたと、こちら側の私の大喧嘩でしたね。

 

そちら側のあなたと大喧嘩をしたのは、

遡ること、今から約3年前。

 

あなたが書き遺した、

なぞなぞみたいな言葉の意味の全てが解けた日のことでした。

 

あの日の私が急に不安な気持ちに襲われたのは、

胸の内に収めたはずのあの存在を、突然に思い出したからでした。

 

あの存在。

それは、私たちが出会う前に、

あなたがお付き合いをしていた方からの手紙と写真。

 

それらを初めて見つけたのは、此処へ越してくる前。

少しずつ、あなたのものを整理し始めた頃のことでした。

 

あなたには申し訳ないと思いながらも、

手紙の中身を読んでしまったことは、ごめんなさい。

けれど、手紙に書かれた内容を知ったからこそ、

いつかのあなたが話して聞かせてくれた言葉に、

嘘や偽りが一切なかったことを知ることが出来ました。

 

あなたにはあなたの過去があり、私には私の過去がある。

それぞれがそれぞれに経験を重ね成長をして来たからこそ、

私たちは出会い、惹かれ合うことが出来たのでしょう。

 

見つけてしまった手紙と写真に対して、

これもまたあなたが歩んだ大切な人生だったのだと、

そう納得した形で、あなたのものを纏めた箱の中へと収めることが出来たのでした。

 

それなのに、何故だったのでしょうか。

 

一度は納得し、全てを胸の内へと収めた筈だったのに、

何故だかあの日の私は、突然に酷く不安な気持ちに襲われたのでした。

 

どうして、あんなものを取っておいたのよ!

 

あの時、俺から離れないでって言ってくれたのに、

その言葉は、あなたからの大切な想いだと思っていたのに、

本当は違うの?

 

不安な気持ちは怒りとなって、抑えることが出来ないままに、

いつも通りに穏やかな顔をしたあなたへ、

怒りの感情をぶつけてしまったのでした。

 

どんなに望んでも、もう二度と、その声は聞こえない。

そう理解しながらも、

抑えることの出来ない感情を、

思いのままにぶつけてしまった私の中に浮かんだのは、

そちら側のあなたの声とも取れる言葉でした。

 

は?じゃぁ、あの手帳読んでみろよ!って。

 

あの時の手紙を書いた日の私は、強い力に突き動かされたと、

こう表現しただけに止めておきましたが、

あの日の私が、あの手帳を見返すきっかけへと繋がったのは、

突然に襲ってきた不安な気持ちを、

あなたにぶつけてしまったことから始まりました。

 

頭に浮かんだ言葉に従って、病床時のあなたの手帳を読み返してみれば、

あの夏のあなたの感情が私の中へと流れ込んで来て。

なぞなぞみたいなあなたの言葉の全ての意味を知り、

私は、声を上げて泣いたのでした。

 

あの時は、突然に感情的になってしまって、ごめんなさい。

でも、こうして振り返ってみれば、

その声が聞こえないままに、そちら側のあなたと大喧嘩をしたあの日の時間も、

今は大切な宝物。

 

だって、あの時間がなければ、私はきっと、

なぞなぞみたいなあの言葉の意味を、知らないままにいた筈だもの。

 

うん。本当は分かってる。

あの手紙も写真も、私たちが結婚をする時に持って来たものではなかったね。

あなたのお父さんが亡くなった後で、実家の大掃除をした時に、

僅かに残っていたあなたの荷物の一部として持って来ただけでしたね。

 

もしも、あの日の私たちの大喧嘩に、

必然的な意味が隠れていたとするのなら、

私の中に、ほんの僅かなわだかまりも残さずに、

本当の意味で、納得をした形で、

胸の内へと収め直すための時間だったのかも知れません。

 

あの手紙と写真は、あなたがこの世界を歩んだ証として、

今でも、箱の中へと収まっています。

 

でももう、大丈夫。

私の心は、不安になったりはしません。

あなたがたくさん愛されながら、

この世界を歩んだ証として、大切に保管しておきますね。

 

まさか、あなたを見送った後で、あんなふうに、

あなたと大喧嘩をするだなんて、思ってもいませんでした。

 

今思えば、なんだかちょっと笑ってしまうけれど、

どんなに離れていても、私たちはあの頃のままの私たち。

直ぐに仲直りが出来ましたね。

 

さっきはごめんね

 

あなたが書き遺した言葉の全ての意味を知り、

泣きながら伝えた私の言葉を、

あなたはきっとすぐ側で、聞いてくれていたような気がしています。

 

 

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