拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

遺品整理の中に流れた不思議な瞬間

あなたへ

 

先日の遺品整理の中に流れた、

不思議な瞬間を思い出していました。

 

あの子と一緒に、三箱の段ボール箱と向き合ったあの日。

一番最後に開けたのは、

病院から引き上げてきたものが入った箱でした。

 

ひとつずつ、中身を整理しながら、

やがてあの子が手に取ったのは、あなたの言葉が遺されたノート。

 

あの頃のあなたの文字を巡るあの子にね、

あの、なぞなぞみたいな言葉の意味を教えたの。

こうすれば、その言葉の全ての意味が分かるんだよって。

 

長い間、あのページを見つめていたあの子は、

やがて、ノートから顔を上げて言いました。

どうしてこんなに、ややこしい言葉を遺したのかなって。

 

あの子の言葉を反芻する間も無く、

何故だか、自分の口から出てきたのは、

直ぐには、その意味を分かってほしくなかったからだと思うよと、

こんな言葉でした。

 

あの時に私は、自分の声を聞きながら、

あの夏にいたあなたの想いを見つけた気がして、

そうだったんだなと、ひとりで納得したのでした。

 

あれは、考えてみればみるほどに、不思議だった瞬間でした。

 

だって、何故あんなにややこしい言葉を遺したのかだなんて、

あの子に言われるまで、一度も疑問を持っていなかった私が、

そこに隠されていたであろうあなたの想いを、

簡単に汲み取れるはずなどないのだから。

 

あの時の言葉は、私の口から出た言葉でありながら、

実はきっと、あなたの言葉であったのでしょう。

 

ほら、この不思議な現象は、

あの子におやすみの挨拶をしたあの時と、同じだもの。

 

ねぇ、あなたは、何故、

あの言葉の意味を、直ぐには分かってほしくなかったのだろう。

 

あの、不思議な瞬間を思い出しながら、

様々に考えを巡らせてみましたが、

私の中に浮かんだ答えは、

どれも、あなたの想いとは違うように感じました。

 

あの言葉を初めて見つけた日の私たちが、

その想いの全てを受け取ることが出来なかったように、

此処から先へと歩まなければ、

見つからない答えが、きっと何処かに隠れて待っていてくれるのでしょう。

 

きっとそれは、今の私たちよりも、更に成長出来た時。

 

あなたが遺したなぞなぞみたいな言葉の意味を知り、

全ての謎が解けたつもりでいた私ですが、

あなたが遺した言葉には、ずっと奥の深い幾つもの謎が、

隠されていたんだね。

 

新しい謎が解けた時、どんな気持ちがするのだろう。

その時を楽しみに、私たちは此処から先へと歩んで行くよ。

 

 

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