拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

ずっと先の未来のあの子へのサプライズ

あなたへ

 

長かった大掃除も、漸くひと段落を迎え、

改めて、随分と少なくなったあなたのものが入った箱の中を見つめてみました。

 

私たちが出会う前に、あなたが歩んだ証。

そして、私たちが出会ってからのあなたが歩んだ証。

 

実はこれらの殆どは、あの子が残すかどうかを決めたものでした。

 

これは捨てても良いんじゃないかな

 

いやいや、これは面白いから取っておこうよ

 

こんな言葉のやり取りの中、取っておくことに決まったものたちは、

幾つくらいあっただろう。

 

あの子ったら、

いつかの私からあなたへの手紙も、取っておくって聞かなかったのよ。

手紙の中身までしっかり読んで、

ラブラブだったんだねなんて、私を揶揄いながら、

しっかりと、箱の中にあの頃の手紙を仕舞ったの。

 

あなたに宛てたあの手紙を書いた頃の私は、

思えば、あなたと結婚することも、あの子が生まれて来てくれることも、

想像すらしていませんでした。

 

ただ、あなたのことが好き。

そんな気持ちで私が書いたあの手紙を、あれからずっと先の未来で、

あなたとの間に生まれて来てくれた我が子に、

読まれてしまう日が来るだなんてね。

人生って、なんだかとても不思議ですね。

 

私があなたのものを整理するのは、あの日がきっと最後。

ほんの僅かに残したものたちは、きっと、

私がこの世界を去った後で、

あの子が処分を決めるのでしょう。

 

あの子と一緒に、あなたのものを処分したあの日の私は、

次にあの箱を開けた日のあの子が、苦しい気持ちにならないように、

出来るだけ長く生きて、

あの子が懐かしい気持ちで、箱の中身を振り返ってくれたらいいなと、

密かにこんなことを考えていましたが、

その日を迎えたあの子が幾つであっても、

やはり、胸を痛めてしまうのかも知れませんね。

 

きっと、あの箱を開けた瞬間のあの子の中に鮮明に蘇るのは、

それまであの子の中に眠っていた記憶。

 

あの子に笑い掛けるあなたの姿。

大きなその手で頭を撫でられた記憶。

あなたの膝の上から見ていた景色。

背中に感じたあなたの温もり。

 

あなたのものに触れれば、

あの子の中に蓄積された12歳までの記憶が、きっと鮮明に蘇るのでしょう。

 

そうして、記憶を順番に辿りながらやがて、

巣立ち前に、

私と一緒にあなたのものを整理した日のことを思い出すのかも知れません。

 

あの日の私たちが、どんな話をしたのか。

そして、どんなふうに笑い合ったのか。

 

きっと、そのどれもが、

その頃のあの子にとって、遠い過去となった記憶なのでしょう。

 

あの子の中に眠っていたそれらの記憶が鮮明に蘇った時、

あの子はどんな顔をするのだろう。

 

きっと、ずっと先の未来。

そこに流れる時間は、

私が見ることの出来ない時間なのでしょう。

 

それなら、あなたのものが入ったこの箱を、

このままの形で、完成としてはいけないような気がしました。

 

だって、この箱を開けた日のあの子が、

どんなに年を重ねたあの子であったとしても、

泣いているような気がしてしまうもの。

 

その日を迎えたあの子が、

そこで立ち止まってしまわぬように、

ちゃんと前を向いて歩み続けられるように、

その日を迎えたあの子に宛てた手紙を入れておくことにしました。

 

遠い過去となった記憶を辿った日のあの子が、

思わず笑ってしまうような時間を過ごすことが出来ますようにと、

そっと、願いを込めて。

 

これで、あなたのものを仕舞った箱の完成です。

 

これは、ずっと先の未来のあの子へのサプライズ。

その日が来るまで、あなたと私、2人だけの秘密ですよ。

 

 

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