拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あなたと私だけに見える景色

あなたへ

 

あなたと2人で過ごした時間や、家族3人で過ごした時間。

そして、あの子と2人で過ごした時間。

 

私が歩んで来た道のりを振り返った時に、

胸の中へと鮮明に蘇った記憶を見つめる私ですが、

それら全ては、私の感覚で捉え、集めた記憶たち。

 

例えば同じ場所から同じ景色を見ていても、

感じ方や視点が人それぞれ違えば、

一緒に過ごした時間を振り返った時に見える景色も、

人それぞれに違っているものなのでしょう。

 

今日の私は、あの子と共に過ごした時間を2人で振り返った時に、

新たに私に見えた景色を思い出していました。

 

同じ時間を過ごしながらも、

あの子はあの子の持つ感性の中で、

そして、私は私が持つ感性の中で、

それぞれに違った世界から同じ時間の流れを見ていたからこそ、

同じ過去を振り返った時に、

互いの中には、それぞれに別な景色が映し出されていたのでしょう。

 

2人が持つ記憶を掛け合わせたあの瞬間、

私が持つ景色の中には新たな色が染まり、

より鮮やかな景色が見えたような気がしました。

 

そこに完成されたのはきっと、2人で見ることの出来る景色。

あの時の私たちは、

漸く、同じ景色を見ることが出来ていたのかも知れません。

 

あの子と私の持つ記憶が、それぞれに違うように、

きっとあなたも、あなただけが持つ感性の中から、

この世界の景色を見つめていたのでしょう。

 

もしも今、あなたと2人で、

あの頃の記憶を辿ることが出来たのなら、どんな景色が見えたのだろう。

 

一緒に見た景色を僅かに振り返りながらも、

ただ前だけを見て歩んでいた私たちの16年間は、

ゆっくりと過去を振り返る場所を見つけることが出来ないままに過ぎ行きました。

 

私たちが2人でゆっくりと記憶を辿るには、

あまりにも時間が足りませんでしたね。

 

もしも今、この瞬間に、

ひとつだけ願いが叶うとするのなら、

ほんの少しだけ、あなたと同じ景色を見てみたい。

 

あなたの胸の中には、今、どんな景色が見えますか。

 

どんなに思い描いてみても、

もう、私には見ることの出来ない景色であることを知りながらも、

それでも何処かに探してみたくなってしまうよ。

 

あなたと私だけに見える景色を。

 

 

 

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