あなたへ
私たちはきっと、前世では恋人だったね
何の前触れもなく突然に蘇ったこの言葉は、
あなたと出会う前の私が、友人とよく言い合っていた言葉です。
長い間、封印されていた記憶を突然に思い出したのは、
あの子が巣立ち、大掃除と奮闘していた頃のことでしたが、
またもや何の前触れもなく突然に蘇った記憶を辿りながら、
やはり私はチグハグな過去を歩んできたのだと、
その証拠をまたひとつ、見つけたような気がしました。
前世の恋人。
こんな言葉の表現に、あなたは言うのでしょうか。
俺以外の人に対してもそんな感情を持っていたの?って。
記憶が蘇ってみれば、
あなた以外にも不思議な繋がりを感じる人と出会っていたことに、
私自身も驚いてしまいましたが、安心してください。
あの頃の相手は、互いに恋愛対象外であった女性の友人です。
あの頃の私が日常を共にしていたのは、
何故だかいつも、互いに同じことを考えていた不思議な友人でした。
互いに感じていた不思議な感覚に、
私たちはきっと、前世では恋人だったのかも知れないねと、
こんな話をしては、互いを少しだけ特別な相手として扱っていたのでした。
特別視していたからなのか、彼女は私にとって、
他の友人とはしなかった喧嘩が出来る友人でもありました。
時々には喧嘩もしてしまうけれど、ちゃんと仲直りが出来る相手。
あの頃の時間を思い返してみれば、なんだかあなたと私の関係性と、
ほんの少しだけ似たものを持つ友人であったようにも感じます。
友人との喧嘩は、あなたとのそれよりも、随分と緩やかなものではありましたが、
本音をぶつけ合うという意味では、
後に出会うあなたと向き合い続けるための予行練習のような時間を過ごしていたと、
こんな解釈をすることも出来るのかも知れません。
あの頃の私は、現実的に目に見えるものしか信じてはいなかった筈ですが、
何も考えずとも、
前世の繋がりという目には見えない不思議な繋がりを感じ取り、
それを自然な形で受け入れていたという意味では、
やはり幼かった私が持っていた感覚を封印し切ることは出来ないままに、
成長していたのだと言うことが出来るのでしょう。
長い間、封印されていた記憶を見つけた日には、随分と動揺してしまいましたが、
あの頃の記憶を少しずつ受け入れ、更に蘇った記憶を繋ぎ合わせてみれば、
点と点が少しずつ、
結び付いていくような感覚を捉えることが出来ました。
どうして目に見えるものしか信じないの?
これは、いつかのあなたの言葉です。
目には見えないものを肯定するあなたと、
目に見えるものだけを信じていた私。
あの頃の私は、あなたと私は全くの真逆な感覚を持った2人であると、
こんなふうに考えていましたが、封印されてた記憶を取り戻してみれば、
実はあなたと私は、とても似た感覚を持っていたことに気が付いて。
もしも今、あの頃のあなたと話をすることが出来たのなら、
私は、もっと多くのあなたの考える世界を、知ることが出来たのかも知れません。
もっと色々な視点からの話をすることが出来たのなら、
私たちはどんなふうに世界を広げることが出来たのでしょうか。
そこに見える景色は、どんな色の景色だったのだろう。