拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

夜のピクニック

あなたへ

 

夜のピクニックに出掛けよう

 

こんな遊びを思いついたのは、いつのことだっただろう。

 

そう。あれは確か、あなたがあの子に、

天体望遠鏡をプレゼントしたことがきっかけで思いついた遊びでした。

 

庭に出て星の観察をするだけでは飽き足らず、

もっと広い場所でたくさんの星を見てみたいとこんな気持ちから、

夜のピクニックを思い付いたのは、いつかの夏の季節。

 

お弁当を持って、星の観察に出掛けようよ

 

こんな提案をした私に、あの時のあなたは、言ったのよ。

夏よりも冬の方が星が綺麗に見えるから、冬になったら出掛けようって。

 

あの夏の中にいた私たちは、

確かに次の冬を待ち遠しく思っていたはずなのに、

慌ただしく過ぎ行く毎日の中、

今度の約束をどこかに置き忘れたままで、歩んで行きましたね。

 

あの頃、楽しみにしていた今度の約束を思い出してみれば、

残念な気持ちもありますが、あの頃の私たちのことです。

夜のピクニックを何処かに置き忘れた変わりに、

きっと別な何かに夢中になっていたのでしょう。

 

置き忘れたままだった今度の約束を不意に思い出させてくれたのは、

ここ最近の随分と冷たくなった夜の空気でした。

 

あぁ、そうだった。

夜のピクニックに出掛けようって、

いつかの私たちは、こんな約束をしていたんだったなって。


随分と寒くなったとは言え、

冬と呼ぶにはまだ早い時期ではありますが、

今日の私は、夜のピクニックを実行しようと思い立ちました。

冬になったらとも考えましたが、思い立ったが吉日です。

だって、冬を待っていたら、

また忘れてしまうかも知れないもの。


夜のひとりピクニック。

とは言え、ひとりで、それも暗い時間にレジャーシートを広げる勇気は出せなくて、

食事は、車の中で摂ることに決めました。


ピクニックと調べれば、野外で食事をすることとありました。

ならば、外の景色を眺めながら、車内で食事を摂ることは、

ピクニック風、とでも呼ぶのが正解なのかも知れませんが。


場所は、人工的な光が少なく、広い空を見上げることが出来る場所。

いつかのあなたが、

大きなハート型の空を見せてくれたあの場所を選びました。

 

暗い時間帯にあの場所へひとりで行くことは、

思えば初めてのことでしたが、

あの場所へ行ってみて、良かったなと思いました。


今夜は、幾つかの星しか見つけることが出来ませんでしたが、

いつもとは違う場所での食事も、

星を探して広い夜空をただ見上げた時間も、なんだかとても楽しかった。

 

きっとね、あの場所なら、

冬にはもっとたくさんの星を見つけることが出来るのでしょう。


色々な意味で怖がりな私は、

車のある場所から遠く離れることはしませんでしたが、

それでも十分に、夜のひとりピクニック(風)を楽しむことが出来ました。


ねぇ、あなた。

もしもね、あの頃、夜のピクニックへ出掛けていたのなら、

私たちはどんな話をしたのだろう。

 

あの子はどんな声を聞かせてくれたのかな。


きっとね、夜には夜が持つ力があって、暗闇の中だからこそ、

いつもとは違った話をすることが出来たのかも知れません。


夜空を見上げながら、ひとり、

見ることの出来なかった時間に思いを馳せてみれば、

楽しい気持ちの中に、僅かな胸の奥の痛みを見つけて。

これもまた、夜が持つ力だったのかも知れません。


ねぇ、あなた。

ここに、今度の約束をしても良いですか。

 

私たちが出会って、初めての冬を迎えたら、

一緒に夜のピクニックに出掛けよう。


その時にはまた、おおぐま座を教えてね。

 

来世の私も、きっと学校でおおぐま座を習うのだろうけれど、

あなたと出会うその時までには忘れておくからさ。

 

北斗七星は習ったけれど、おおぐま座は習ってないよ

 

こんな私の言葉に、あなたは思い出してくれるかしら。

ずっとずっと昔、前世で聞いた私のこの声を。

 

2人で一緒に同じ道を歩みながら、

いつの日か、またあの子が生まれて来てくれて。

あの子が少し大きくなったらさ、

今度は3人で、夜のピクニックに出掛けよう。

 

その時には、暗闇の中で家族3人、手を繋いでさ、

今度こそ、いつもとは違った話をしようね。


そうして、

やがて大きくなったあの子が私たちの元から巣立って行ったのなら、

今度はまた、2人で夜のピクニックに出掛けてさ、

また2人に戻ったねって、それまでの歩みをゆっくりと振り返りながら、

一緒に同じ夜空を見上げよう。

 

その時には、

今の私が知らないあなたの声を聞かせてね。

 

これは、全部、今度の約束だよ。

 

 

 

 

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