あなたへ
あの、得たいの知れない不安な気持ちを思い出していました。
あれは、あなたと結婚し、どれくらいが経った頃からだっただろう。
あの頃の私は、あなたが側にいることも、
家族3人で歩む時間がずっと続くことも、当たり前に信じていましたが、
そんな日常の中、
あの、得体の知れない不安な気持ちは何の前触れもなく、
いつでも突然に私の中へと現れました。
あなたがこの世界からいなくなってしまったら、どうしようって。
得たいの知れない不安な気持ちが突然に襲い掛かってきたのは、
いつでもあなたが家にいない時間。
どうしようもなく不安な気持ちでいっぱいになってしまった私は、
明確な理由も記さないままに、唐突にあなたにメッセージを送りました。
気を付けて仕事をしてね
とか、
気を付けて帰って来てねって、唐突なメッセージを送る度に、
家に帰って来たあなたから、不思議そうな顔をしながら聞かれましたっけ。
今日のメッセージ、どうしたの?って。
あの頃の私は、ただなんとなく嫌な予感がしただけなのだと、
こんな説明をしただけで、明確な理由を話せずにいました。
だって、もしも正直に話してしまえば、
本当にあなたがいなくなってしまうような気がしていたから。
あの得たいの知れない気持ちのことは、誰にも話せずにいましたが、
どんなに不安な気持ちに襲われても、
いつも通りに帰宅したあなたの顔を見れば、
私の中から、すっかりとあの不安な気持ちは消え去って。
私はいつから、こんなにも心配性になってしまったのだろうかと、
そんなことを考えながらも、
私にはそれだけ大切な人が出来たのだと、毎回、
そんなふうに理由をつけて自分を納得させたのでした。
蘇ったあの頃の記憶を辿ってみれば、
例えば、いつもよりも帰りが遅いから等の条件など、
何も揃ってはいないにも関わらず、
理由も分からずに、あんなふうに突然に不安な気持ちに襲われたのは、
あなたに対してだけでした。
こうして改めて、あの頃に感じていた気持ちを振り返ってみれば、
この人生の中で、あまり長くあなたと一緒にはいられないことを、
私は何処かで知っていたのかも知れません。
それは、自分が歩む人生は、自らが選んで生まれて来たのだと、
いつかの先輩が話して聞かせてくれた言葉とも繋がりがあると、
考えることも出来るのかも知れません。
ふと思い出した過去の出来事。
突然に蘇った過去の記憶。
様々な過去をひとつずつ集めながら、此処までを歩んで来た私ですが、
それらを集めてみれば、少しずつ、点と点が結ばれて。
あと幾つくらいの点を結ぶことが出来たら、
私の知りたい本当の答えに辿り着くことが出来るでしょうか。