拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

あなたが遺した最後のなぞなぞ

あなたへ

 

あなたが入院していた頃に書いていたノートを開いたのは、

あなたが息を引き取った日のことでした。

 

あの子と一緒に、ページを巡れば、

やがて見つけたのは、あなたの想い。

 

自分の人生に、後悔はない

ただ、遺した人が、

この先、どんな人生を送るのか、少し気になる と、

こんな言葉を印象付けた、あなたの言葉でした。

 

あれから、あのノートを開くことが出来ないままに、

時々、あなたの言葉を思い出しました。

 

自分の人生に、後悔はない

ただ、遺した人が、

この先、どんな人生を送るのか、少し気になる と。

 

突然に、あのノートを開かなければならないと、

何か強い力にでも突き動かされたかのように、

あのノートを開いたのは、昨日の夕方のことでした。

 

深呼吸をして、気持ちを整えてから、

ゆっくりと開いたあの頃のノート。

 

入院した日からの、治療内容の記録から始まるノートを、

1ページずつ、巡りながら、

あの日、あの子と一緒に見つけた、

あなたの想いへと辿り着きました。

 

それは、私の中の記憶よりも、長い文章でした。

 

最初に書かれていたのは、

君、あなた、2つの人称代名詞が出てくるひとつの文章。

 

このノートを開いたあの日の私には、

その言葉の意味を飲み込めずに、最後に書かれた、

自分の人生に、後悔はない

という言葉だけを強く印象に残したままで、

ノートを閉じたのでした。

 

今なら、その意味が分かる気がして、

あなたの言葉を何度も読み返しながら、

私は、漸く気が付きました。

 

最初に出てくる君は、あの子を、

次に出てくるあなたは、私を指していることに。

 

それはきっと、正解だったのでしょう。

 

あの子と私に当て嵌めて、前後の文章を読み解けば、

ハッキリとした、あなたの想いが伝わってきたのです。

 

あなたが遺した、その言葉の意味の全てを知り、

私は、声を上げて泣きました。

 

何故なのでしょうか。

 

あなたの言葉から、

あの頃のあなたの瞳に映る、

あの子と私が見えた気がするのです。

 

そこにいるあなたの心は、とても穏やかで、

ただ、目の前にある、

あなたにとっての大切なものを見つめているのです。

 

生を望むでも、諦めるでもなく、

後悔でも、悲しみでもない。

 

あなたが書き遺した言葉の意味を読み解いた私に見えたのは、

あの頃のあなたの、

ただ、穏やかで、幸せな気持ちだったのです。

 

あなたが書き遺した、その言葉の本当の意味を知り、

声を上げて、たくさん泣いたけれど、

私が流した涙は、

悲しい、でも、寂しい、でもなく、

ただ、穏やかな気持ちのする涙でした。

 

それは、

あなたを見送り、何度も流してきた、

どの涙とも違う、とても、温かなもの。

 

あなたが遺した、なぞなぞみたいな言葉は、

あなたを想い、流す涙に、

こんなに穏やかな涙があることを、私に教えてくれました。

 

 

あなたが遺したあの言葉の全てには、

あなたとあの子と私の、3人分の人称代名詞がありました。

 

あなたはきっと、最後に、

家族3人の形を、そっと、ここに遺して逝ったんだね。

 

あれから、6年と3か月。

あなたが最後に遺したなぞなぞは、

此処に、漸く、解けましたよ。

 

 

 

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