拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

2019-01-01から1年間の記事一覧

人物画

あなたへ ねぇ、あなた 動かないでね そのまま、じっとしてて? 今日は、あなたの絵を描きました。 買い物に出掛けた時に、 なんとなく買ったスケッチブックを眺めながら、 そうだ、 この秋は、芸術の秋にしようって、思いついたの。 何を描こうかなって、部…

新しいスケール

あなたへ 今の私には、ちょっとした悩みがあります。 いえ、 ちょっとだけ、強がりました。 本当は、今の私にとって、 それは、結構な大きな悩みだったりもします。 ここ最近、ずっと頭から離れない、 大きな悩みを抱えていた私ですが、 ずっと、ずっと、先…

私が最後にしてあげられること

あなたへ せめて、あの子が社会に出るまでは これは、あなたを見送ってからの私が、 一番初めに立てた目標でした。 あの子が、ひとりで生きていけるようになるまでは、 なんとか、私も生きなければならない と。 あれからの私は、 出来れば、あの子が結婚す…

あなたより1年長く生きた日

あなたへ 丁度、1年前のことを思い出していました。 あの日の私は、空を眺めながら、 ただ、あなたのことを想っていました。 日々の生活の中の当たり前は、 決して、当たり前ではないと、 改めて、 健康で毎日を過ごせることに、感謝しながら、 ここからは、…

どこが好き?

あなたへ ねぇ、あなた 私のどこが好き? 思えば、あの頃の私は、こんなこと、 一度も聞いたことがなかったね。 どうしてだろう。 あなたは、いつでも、側にいてくれたから、 あの頃の私はそれだけで、充分だったのだと思います。 あなたがいる、そちら側と…

あの子の友達

あなたへ 自転車のパンク修理 釣竿の手入れ これは、あなたを見送ってから、間も無くのあの子が、 出来るようになったことです。 あの子には、ちょっと不思議な友達がいます。 あなたも知っている、 あの子が幼い頃から、仲が良かった近所の子。 私には、教…

得体の知れないものへの恐怖

あなたへ 時々、急に怖くなる時ってあるよね 例えば、 誰もいないはずなのに、 影が見えた気がする とか、 誰かの気配や、視線を感じた気がするとかさ 先日、雑談から、 得体の知れない何かに怯える時がある、 という話になりました。 そんな日は、シャンプ…

あなたの隣で眠ること

あなたへ 私の隣で、あなたが眠っている夢を見ました。 目が覚めた私の隣で眠るあなたの姿に安堵し、 夢の中の私は、もう一度、目を閉じたのでした。 目覚まし時計の音と共に、 いつも通りに目が覚めた私ですが、 なんだか、とても眠くて、起き上がる気力も…

コトバ -母へ-

私が 貴女を始めて お母さんと呼んだ日を 知っていますか あれは彼の告別式を終え 間もなくのことでしたね 庭の畑 貴女が大切に育てた野菜を 一緒に収穫しながら まるで世間話でもするかのように 不意に言ってくれたのでした あなたは嫁ではなく娘だからね …

曾孫を抱く日

あなたへ あの子は時々、 自分が思い描く将来について、語って聞かせてくれます。 どんな道へ進み、将来どんな人になりたいのか。 それから、結婚や子供のこと。 たくさんの話を聞かせてくれるあの子ですが、 先日、突拍子もないことを言い出しました。 もし…

コトバ -5年-

彼を見送ってから 5年と1ヶ月ほどが経った 彼を想いながら生きてきた この5年間という月日を振り返りながら 私は初めて 長かったと感じた 彼を見送ってからの月日に対して こんなふうに 何かを感じるのは初めてのことだ 相変わらず この月日を もう と表現す…

夏と秋の間

あなたへ 今日は、夕方から少しの間だけ、気分転換にと、 散歩へ出掛けました。 ゆっくりと、散歩をしながら、空を見上げると、 大きなハート型の雲をみつけました。 あなたと出会う、ずっと前から、 空を見上げるのが好きだった私ですが、 思えば、時々、 …

今、伝えたいこと

あなたへ 俺なんかと一緒でいいの? 何故だか、 いつかのあなたの言葉を、思い出していました。 いつ、どんな時に言われた言葉だったのか、 思い出すことが出来ないままに、 その時、 私がどんなふうに答えたのかを、思い出そうとしていました。 ただ、ひた…

青色

あなたへ 空を眺める夢を見ました。 何の感情もなく、 灰色の空を、ただ眺めていた私の耳元に聞こえたのは、 あなたの声でした。 青に染めてあげるよって。 そうして、私が見上げる灰色の空は、 鮮やかな青色へと変わっていきました。 空って、こんなに綺麗…

コトバ -あの日、死んでしまった私へ-

あなたは私の中の何処かに隠れて 眠っているんだと思っていたよ 何処に隠れているのだろうって ずっと探していたよ でも もう私の中に あなたはいなかったんだね あなたはあの日 誰にも知られないまま 彼と一緒に死んでしまったんだね この5年間 そのことに…

コトバ -認める-

私は時々 この人生の中で 最も辛かった記憶へと引き戻される 彼の心拍数が下がっていることを知らせる音 目の前で蘇生される彼の姿 泣きながら彼の名前を叫ぶ自分の声 部屋から出され 間も無くに聞こえた電気ショックを施す音 まだ一緒にいたいよ 壁のこちら…

不思議な涙

あなたへ 私なら、大丈夫 ひとりで生きていけるよ そう声に出して言うと、 何故だか、勝手に、涙が溢れ落ちました。 今日の私は、どうかしています。 本当は、あなたを探してしまう。 その手に触れたくなってしまうのに、 今の私は、あなたに、大丈夫だと、…

劇薬

あなたへ あなたを見送ってからの私は、時々、 酷く自分を責めました。 なんでも出来たあなたと、なにもできない私。 もしも、どちらか片方が、 あの日、この世を去らなければならない運命であったのなら、 何故、私ではなかったのかと。 何故、なにも出来な…

最後の8月

あなたへ 今年も、夏が終わります。 今日は、8月最終日。 夏の終わりを惜しみながら、空を見上げ、 3人で見た空を思い出していました。 最後に、あなたと一緒に、同じ空を見たのは、 病室から見た空でしたね。 空調が効いた病院内、 窓際のベッド、 家族3人…

コトバ -応援-

ねぇ あなたはどんなふうに生きたい? 鏡の向こう側 突然の問いかけに戸惑いながら 私は答えた どんな生き方が出来るのだろう 私には何が出来るのだろう と は?何言ってるの? 何が出来るか じゃなくて どう生きたいかって聞いたのよ 鏡の向こう側 私と同じ…

3つ目の香り

あなたへ 自宅で、初めて、 あなたにお線香をあげた日のことを、思い出していました。 あれは、告別式を終え、 その姿を変えて、漸く、自宅へと戻って来た日。 自宅へ帰って来たあなたに、初めて、お線香をあげて、 手を合わせながら、泣いたのでした。 私は…

コトバ -買い物カゴの中-

例えば 焼きそば 茹でうどん 冷やし中華 豆腐 納豆 それから プリン ゼリー ヨーグルト スーパーで買い物をしながら 3個で1セットのものが多いように感じたのは いつのことだっただろう 1セットで家族3人分 それは我が家にとって 丁度良い数だった 私の買い…

朱夏

あなたへ 朱夏という言葉を知ったのは、つい先日のことでした。 人生には、青春だけでなく、 朱夏、白秋、玄冬と、 それぞれ、四季に例えた言葉があることを、先日、初めて知りました。 この言葉に当てはめるなら、 私は、今、朱夏という夏の季節を歩んでい…

特等席

あなたへ ここ数日のこちらでは、雨が多く、 とても不安定な天気が続いています。 眠る時も必須だったエアコンは、 気が付けば、日中のみの出番となり、 夜になれば、 薄い毛布に、心地良さを感じます。 夏の終わりに、少し寂しさを感じながらも、 この時期…

コトバ -心の距離-

この温もりを感じるようになったのは いつからだろう また今日も 右手をそっと握り締めて ただ静かに そこにある空気を捕まえたよ 彼を想い 不意に心が痛くなった時 ここにいるよ とでも言いたげに 右手がふわりと温かくなるんだ それはあの日 握り返しては…

何かが足りない気持ち

あなたへ 何かが足りないなって思ったんだ 足りない何かって、なんだろうなって考えていたら、 私だったのだと、こんな話を聞かせてくれたのは、 私たちが出会ってから、 どのくらいが経った頃だったでしょうか。 なんで隣にいないの?って思ったんだって。 …

青春

あなたへ 例えば、高校生が主人公となった映画やドラマを観ている時 例えば、中学生の頃を振り返った時 あの子は時々、青春という言葉を口にします。 中学生の頃、 こっそりと高校生活への憧れを抱いていたあの子。 あぁ、俺、青春してるなぁ 高校生になった…

お母さんの幸せの場所

あなたへ 3人の子育てをした、あなたのお母さん。 一番下の息子には、特に手を焼いてね 本当に、大変だったのよ 今、あなたの実家で、お母さんと暮らす、 あなたの弟の話を聞かせてくれたのは、 先日のお盆に、あなたの実家へ行った時のことでした。 色々と…

コトバ -心霊写真-

毎年のお盆に 彼の実家の地域で行われる花火大会に出掛けるようになったのは あの子が生まれ どれくらいが経った頃からだっただろうか 彼の家族と皆で一緒に花火を観に行くことが いつの頃からか恒例の行事となっていた 彼が息を引き取ったあの年も 彼の家族…

お盆過ぎのそちら側

あなたへ お盆明けの日。 きっとあなたは、 雲に乗って、この街を見下ろしながら、そちら側に帰るのだろう。 そんな気がしたのは、いつだっただろう。 雲の上には、そちら側でのあなたの友達がたくさんいてね、 楽しそうにしているあなたの姿が見えた気がし…