あなたへ
あの子が高校に上がり、少しずつ、上達を感じた料理は、
相変わらず、苦手分野ではありますが、
最近の私は、また色々な新しい料理に挑戦しています。
職場の先輩に教わった料理や、自分で調べた料理。
今のところ、失敗もなく、順調に、新しい料理を開拓中です。
あまりお腹が空いていないから、晩ご飯はいいかな
昨夜のあの子は、
少しだけ、おかずをつまむだけのはずでしたが、
やっぱり米も食べたい
これ、凄く美味しいよ
なんて、
お腹が空いていないはずのあの子が、
たくさん、食べてくれました。
そんなあの子を、
なんだか、とても嬉しい気持ちで、眺めながら、
先輩方からの言葉を、改めて思い出していました。
子供が高校生になってね、
毎日お弁当を作るようになると、
色々な料理を覚えるようになるものよ
だんだん上手になるから、大丈夫よ と。
あなたを見送ってからの私は、
少しずつ、料理のレパートリーを広げてきましたが、
新しく挑戦した料理が美味しく出来るとね、
想うのは、いつでも、あなたのこと。
あなたにも食べさせたかったなって、
ほんの少しだけ、胸の奥が痛くなります。
だって、どんな顔で喜んでくれるのか、
どんな顔で、私が作った料理を食べてくれるのか、
あなたの顔が、見える気がするもの。
きっとね、
あなたも、あの子みたいに、たくさんおかわりをしてくれて、
たくさん作ったはずの料理は、
すぐになくなってしまうの。
そうして、
今日は、食べ過ぎたな って、
お腹をポンポン叩きながら、満足そうに食後のコーヒーを待つの。
そう。
昨夜のあの子と、同じように。
あなたとあの子がふたり揃って、満足そうな顔をして、
食後に淹れるコーヒーを待ってくれている感じは、
どんな幸せな気持ちがするのだろう。
もう少しだけ、側にいてくれたら。
もう少しだけ・・・
こんな時にね、考えてしまうのです。
もう少しだけ、長く、
あなたが此処にいてくれたら良かったのになって。