あなたへ
3年前の今日は、一時退院の予定の日でしたね。
あなたの一時退院が決まったのは、1週間程、前の事だったでしょうか。
あの日から、ずっと、ワクワクしていた事、よく覚えています。
あなたが帰宅した時に、ゆっくりと寛いで欲しくて、
時間を見つけては、念入りに掃除をしました。
ずっと、あなたが担当してくれていた庭の草取り。
いつの間にか、伸び放題だったけれど、
あなたに心配させたくなくて、草取りも、頑張りました。
あの子も、とても、協力してくれていましたよ。
綺麗に草取りしてさ、お父さんをびっくりさせようよ って。
あの子も私も、
あなたの一時帰宅が、本当に待ち遠しかった。
一時帰宅の日にね、あなたをびっくりさせようと思って、
あの子と私には、小さな秘密がありました。
運転があまり得意ではない私は、
家からほんの少し離れただけで、知らない道も多かったけれど、
あの頃の私は、病院への近道を見つけた頃でした。
その道を見つけるまでには、道に迷ったり、
なんだか、遠回りになってしまったり、
迷子になりながら、見つけた近道。
ちょっぴり、あなたに自慢したかった。
一時退院の日に、あなたをびっくりさせたくて、
近道を見つけた事は、ずっと、内緒にしていました。
いつの間に、こんな道、覚えたの?って、
あなたのびっくりした顔が見たかった。
きっとね、あなたも知らなかった道だから、
知らなかったでしょ?
なんてさ。
どうでもいいような小さな秘密。
あなたに話すことが出来ないなんて、思わなかった。
一時帰宅の予定の日。
話をする事も出来なくなったあなたに、
私は、ただ、泣いていたんだった。
意識のないあなたが、一粒の涙を流したのは、
ちょうど、この頃でしたね。
一緒に、帰りたかったね。
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