拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

我が家のドライヤー

あなたへ

 

我が家の青いドライヤー。

これは、私たちが結婚した時に、

私がそれまで使っていたものを、持って来たものでした。

 

昔のものは丈夫だと、どこかでこんな言葉を聞いたことがありますが、

その言葉の通り、このドライヤーは、大変に長持ちで、

思えば、あなたと刻んだ時間よりも長い付き合いのあるものでした。

 

振り返ってみても、いつ、このドライヤーを購入したのか、

はっきりとは思い出せませんでしたが、

私が高校生の頃には、この青いドライヤーを使っていた記憶があるので、

その頃、若しくは、それよりも前に購入したものだったのでしょう。

 

毎日、何気なく使っていたこのドライヤーとの歴史を思い返してみれば、

あなたと出会う前の、今よりもずっと若かった頃からの私の髪を乾かし、

やがて、結婚したあなたの髪も乾かしてくれるようになりました。

そうして、私たちの元へと生まれてきてくれたあの子の髪にも、

優しい風を送ってくれました。

 

あなたとあの子と家族3人で、家電量販店へ出掛けた日、

何気なく眺めたドライヤーのコーナーで、

次は、ピンク色のドライヤーが欲しいなと、

ほんの少しだけ、新しいドライヤーに憧れたことを思い出します。

 

次は、ピンク色のドライヤーが欲しいな

 

新しいドライヤーへの妄想を膨らませながらも、

この青いドライヤーは、この先もきっと、ずっと壊れることはないのだろうと、

そんなふうにさえ思えたほどに、ずっと元気に動いてくれていました。

ですが、その日は、突然にやって来ました。

 

どんなにスイッチを切り替えてみても、

弱々しい音と共に、僅かな風しか出なくなってしまったのは、先日のことでした。

 

あの時の私の中に思い浮かんだのは、

テレビを叩いて直すという、昭和の時代が舞台となったアニメの中の一コマ。

それがドライヤーにも有効であることには、とても驚きましたが、

安堵の時間も束の間に、

いよいよ、青いドライヤーとのお別れの日を迎えたのです。

 

長い間、ありがとう

 

青いドライヤーに、感謝と、お別れを告げると、

あの頃、ほんの少しだけ憧れていたピンク色のドライヤーを購入しました。

 

青いドライヤーを見つめながら、これまでを振り返ってみれば、

なんだか少し、寂しい気持ちにもなってしまいましたが、

今、私たちは、

新しいドライヤーから発せられるマイナスイオンに癒されながら、

夜のひとときを楽しんでいます。

 

最近のドライヤーというのは、凄いです。

乾くのが非常に早く、とても驚きました。

ドライヤーをするのをいつも面倒くさがるあの子も、

我が家に吹くこの新しい風を、とても気に入ってくれています。