あなたへ
キミがひとりで歩めるようになる日まで、ずっと一緒だよ
生まれてきてくれて、ありがとう
パパとママは、キミのことが大好きだよ
こんな言葉で締め括った未来のあの子への手紙を、
アルバムにこっそりと挟んだのは、
あの子が生まれてから、どれくらいが経った頃だっただろう。
パパとママは
こんなふうに締め括りながらも、
これは、私だけが知っている秘密の手紙でした。
いつか、ずっと先の未来、
もしかしたら、あなたとあの子が2人だけの時間に見つけるかも知れないな
その時には、きっと、いつの間に書いたの?って、
あなたも驚くんだろうなとか、
それとも、
大きくなったあの子が、いつかひとりで見つけるのかなとか、
文字が読めるようになったあの子のことなど、
全く想像がつかないままに、
ずっと先の未来のあの子へ宛てた手紙を、こっそりと、アルバムに挟んだのでした。
それなのにです。
あの手紙が、どこを探しても見つかりません。
失くすはずなどないはずなのに、
どんなに探してみても、どこにも見当たらないのです。
押入れからアルバムたちを引っ張り出して、
あの頃のことを思い返していたのは、先日のこと。
小さなあの子の温もりや、言葉にならない声を思い出しながら、
やがて、あの子への手紙をどれかのアルバムに挟んだことを思い出したのでした。
どんなに探してみても見つからなかったので、
改めて、いつかのあの子への手紙を書いてみました。
締め括りは、あの頃と同じ言葉を選びました。
パパとママは、キミのことが大好きだよって。
幼かったあの子を見つめながら、手紙を書いた時間も、
19歳になった今のあの子を見つめながら、手紙を書いた時間も、
どちらも私の中に湧き上がったのは、あの子を愛おしむ気持ち。
あの頃に書いた手紙は、失くしてしまったけれど、
こうして、改めて手紙を書く時間の中に見つけたのは、
どんなに時を重ねても、変わることのないあの子への愛の気持ちでした。
この手紙を見つける頃のあの子は、どんなあの子なのでしょうか。
おじさんと呼ばれる年齢のあの子なのか、
それとも、お爺さんと呼ばれる年齢のあの子なのか。
やっぱり、ここから先の未来のあの子の姿は、
上手く想像することが出来ないけれど、
もしも、その時のあの子が、
何か辛いことで悩んでいるあの子であるのなら、
あの子の背中を力強く押せるものでありますように。
もしも、その時のあの子が、
前を向いて、全力で歩むあの子であるのなら、
そのまま、前を向き続けるための材料になってくれますように。
この手紙を、あの子が見つけてくれる時、
私はまだ、この世界にいるのか、それとも、
そちら側で、あなたと一緒に、あの子を見守っている頃なのか、分からないけれど、
私が何処にいても、
いつかのあの子のお守りになってくれたらいいなと願いを込めて、
改めて、未来のあの子への手紙をアルバムに挟みました。