拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

雨の日の涙

あなたへ

 

ただあの子が愛おし過ぎて、何をしていても涙ばかりが溢れていたのは、

あの子が巣立ってから、どれくらいの間だっただろう。

 

溢れ出る涙をそのままに、

そこに感じるあの子への愛おしさを存分に味わい尽くしてみれば、

やがて涙を流すことなく、あの子を愛おしく想う私へと変わっていきました。

 

そんな私が、再び涙を流したのは、雨が降った日のことでした。

 

私の胸の中へと収まりつつあった形を、

再び溢れ出させたのが雨の日であったのは、

あの日の記憶と雨とが、同じ景色の中に存在するからなのでしょう。

 

あれからの私は、ひとりで幾つくらいの雨を見ただろう。

 

雨が鳴らす音。

濡れた地面に映る景色。

雨水が僅かに溜まった道路を通過する車の音。

 

それらは私の中にあの日の記憶を鮮明に蘇らせて、

私の胸をギュッと掴んでは、

まだ形は整ってはいないのだとばかりに、私に大粒の涙を溢れさせたのでした。

 

あの子の笑顔。

ハイタッチをした時に改めて感じたあの子の手の大きさ。

 

電車の扉が閉まる音や、

すっかり見えなくなるまで見送った電車の色までもを鮮明に蘇らせて、

溢れ出る想いは涙となって、止め処なく溢れ落ちました。

 

そんな雨の日を、私は何度くらい過ごしただろう。

 

幾つもの雨の日を過ごしながら、

少しずつ、少しずつ、そこにいるあの子への感情の形は整い出して、

やがて、雨が見せる景色は、

あの子へのただ愛おしい気持ちを蘇らせる景色へと変わっていったのでした。

 

今日のこちらでは、雨が降りました。

雨を落とす灰色の空を見上げながら、

雨が降る度に涙を流した幾つもの時間を思い出していました。

 

気が付けば、あの子を愛おしく想いながら泣いていた時間も、

いつの間にか大切な思い出へと変わり、

私の胸の中へと収まっていきました。

 

あなたの分までしっかりと、

溢れ出る気持ちを味わい尽くしたあの時間も、私の大切な宝物。

 

雨の景色を見る度に、振り返るようになったあの時間を、

今日は、あなたにも伝えてみたくなりました。

 

 

www.emiblog8.com

 

 

OFUSEで応援を送る