拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの子がくれた貴重な時間

あなたへ

 

ねぇ、あなた。

子育てとは、本当に奥が深いものですね。

 

あの子が生まれた日から歩んだ道のりを、

視点を変えて見つめてみれば、その分だけ、学びや新たな視点を、

どんどん与えてくれるような気がするのです。

 

今日の私は、あの子が生まれて初めて持った夢から順番に辿りながら、

改めて、あの子には、本当にとても貴重な時間を見せてもらったなって、

こんな気持ちで、あの子を育てた日々を振り返っていました。

 

あの子が生まれて初めて持った将来の夢は、忍者になることでしたね。

可愛らしい夢を持ったあの子は、その夢を叶えるべく、

あなたと一緒に日々、修行に勤しみました。

 

壁抜けの術を取得することは難しかったけれど、

でも、あの子は立派に忍び足の術を取得しましたね。

そっと背後に忍び寄り、

私が後ろを振り返る瞬間を静かに待っていたあの子には、

何度、驚かされたでしょうか。

 

小さな見習い忍者だったあの子は、

やがて、料理に興味を持つようになって。

 

あなたを見送ってから暫くが経った頃のあの子は、

その料理に使った調味料を全て言い当てられるようになったのよ。

その的確な味の感覚にとても驚きながらも、あの頃の私は、

あの子が料理関係の道に真っ直ぐに歩む将来の姿を、思い描いたのでした。

 

やがて、医療関係の道を考えるようになったのは、

あなたを見送ってから、どれくらいが経ってからだっただろう。

 

俺は、患者さんだけじゃなくて、

患者さんを支える家族の人たちの心にも寄り添えるような人になりたい。

 

あの子がこんな視点を持ったのはきっと、

患者の家族という立場からの痛みを知ったからこそだったのでしょう。

 

あの子は痛みを知った分、きっと人に優しく寄り添いながら、

仕事に向き合って行くんだろうなって、

あの頃の私は、そんなあの子の将来の姿を思い描きながら、

あの子が持った新たな夢を全力で応援したのでした。

 

幼い頃から、常に夢を持ち続けて来たあの子は、

どんな時も、全力で夢へと突き進んで。

そんなあの子の姿は、

いつでもキラキラとしていて、とても眩しかった。

 

常に夢を持って、真っ直ぐに歩み続けたあの子は、

やがて、今のあの子が歩む道へと辿り着きました。

 

その時に持った夢へと向かって全力で歩んで行けば、

いつしか、自分が本当に探していた夢や目標へと、

辿り着けるものなのかも知れません。

 

1人の人間が、初めて持った夢からを順番に追う姿を、

すぐ側で身守ることが出来たのは、

思えばこの人生の中で、あの子が初めてのことでした。

 

子供を産み育てれば、

その子が成長するまでの夢や目標を全て知るのは当たり前。

そんなふうにも思えるけれど、本当は、当たり前なんかじゃなくて、

注意深く考えなければ、当たり前と錯覚してしまう奇跡の日々の中で、

私は本当に、貴重な時間を見せてもらうことが出来たのだと感じています。

 

夢を叶えたんだね

本当に凄いね

 

これは、あの子が社会人になってから、間も無くの頃に私が掛けた言葉です。

 

あの時のあの子は、なんて言ったと思いますか。

それは違うよって言ったのよ。

 

俺はまだ、スタート地点にも立っていないんだよ

俺は、スタート地点のずっと手前まで、漸く来れたんだよって。

 

あの子が思い描く本当の将来の夢は、此処から更に先にあるようですよ。

 

あの子が本当に夢を叶えることが出来たと感じた時には、

どんな話を聞かせてくれるのでしょうか。

 

その時のあの子は、どんな顔で笑うのだろう。

 

その時のあの子の瞳には、

この世界の景色が、どんなふうに映るのでしょうか。

 

未来のあの子の姿を楽しみにしながら、

私は私が信じたこの道を、

真っ直ぐに歩んで行こうと思います。

 

 

 

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