拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

逃げ場のない痛みが私に教えたこと

あなたへ

 

どんなに前を向いて歩んでいても、不意に胸の奥がギュッと締め付けられて、

苦しくて堪らなくなる瞬間は、これまでに何度経験してきただろう。

 

あなたを見送るまで知らなかったこの痛みに、

一生向き合い続けるのだと不意に覚悟を決めた瞬間が訪れたのは、

いつのことだっただろう。

 

あなたに逢いたいとしながらも、

あなたのその温もりに触れたいとしながらも、

どんなに痛みを感じようとも、

この生を大切に生きる覚悟は私の中へと確かに根付いた筈なのに、

不意に胸の奥を強く掴まれる感覚を感じれば、

本当はまだ知りたくはなかった痛みなのだと、胸の奥が私に訴えて。

 

もう!あなたは私に何を教えてくれてるのよ!って、

懸命に生きようとしていたあなたへ向けてはいけない言葉であることは、

重々承知の上で、

時々、こんな言葉を吐き出してしまうのは、

私なりの涙の堪え方であり、そして、

僅かに残されているように思えた逃げ場のない痛みを和らげる術でもありました。

 

それなのに、知ってしまった痛みは、

私の胸の奥をギュッと掴んで離さないままに、

私に生きることに対する尊さを教えたがるのです。

 

あなたと一緒に見た時間の中で、

そして、

あの夏からの私が見た時間の中で集めてきた大切な宝物たちに、

どれだけの価値があると思うかと私に問い掛けて、

この人生の中で私が集めたそれは全て、

この世界に生きるからこそ集めることが出来たものたちであり、

生きることがどれだけ素晴らしく、

美しいものであるのかを私に強く訴え掛けてくるのです。

 

あなたもよりも4つ年上だった私は、

愛おしいものたちを集め行くのが人生なのだと、

そんなふうに生きることについてを考えましたが、

ほんの少しだけそこへ新たな視点を足すのなら、

人生は有限だからこそ、

全てがより美しく輝いて見えるものであり、

そして、

この世界で集め行くそれら全ては、

有限の中でしか見つけることの出来ない貴重なものであるとも言えるのでしょう。

 

うちの主人なんてテレビの前から動きませんよ

テレビのリモコンと主人はセットですね

なんて、例えばこんなふうに、

本当は大して不満にも思ってなどいないのに、

悪態とも取れる雑談を誰かと交わしながら、穏やかな時間の中で笑っていられたら、

どんなに良かっただろうって、

時々には、此処に見ることの出来なかった景色を思い描いてしまうこともあるし、

本当はこんな痛みなど、

まだ知りたくなかったなって思うこともあるけれど、

逃げ場のない痛みを知ってしまった私は、

その向こう側に、

生の儚く美しい姿を見つけてしまったのです。

 

永遠のようにも錯覚してしまう有限のこの時間を、

より大切に歩んで行きたいと、

改めて、此処に見える景色を見渡せば、私に届いたような気がしたのは、

楽しんでおいでって、こんなあなたの穏やかな声でした。

 

うん。私ね、その時が来るまで、

精一杯、この人生を楽しんでみるよ。

 

 

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