拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

タブのついた飲み物

あなたへ

 

テレビ画面の向こう側。

缶コーヒーのタブを開けるというワンシーンを見つめた私の中に蘇ったのは、

記憶の中の幾つものあなたの姿でした。

 

タブのついた飲み物を開ける時には、いつも気にした指先。

ネイルに傷がつかないようにと、

慎重にタブを開けようとする私の代わりに、

あなたはいつも、タブを開けてくれましたっけ。

 

いつからあんなふうに、

あなたがタブを開けてくれるようになったのだろうって、

改めて思い返してみれば、

あなたは、初めからずっと開けてくれていたことに気が付いて。

 

出会ったばかりだった頃のあなたは、

開けてあげるよって、こんなふうに声を掛けてくれていたけれど、

いつの頃からか、私がタブのついた飲み物を選んだ時には、

それが当たり前であるかのように、

あなたが開けてくれるようになっていました。

 

誰に自慢するわけでもなかったけれど、

あなたのそんなところが私の自慢でした。

 

恋人から家族になって、

家族になったからこそのぶつかり合いもたくさんあったけれど、

でも、どんなに時間を重ねても、

あなたがしてくれていた当たり前は、いつでも変わらなかった。

 

あなたって、やっぱりとても素敵な人。

 

不意に蘇る記憶の中にいるあなたに、

私は何度こうして恋をしてきただろう。

 

当たり前だった時間の中にいるあなたは、

どんなに時が経っても、

少しも色褪せることなく、私の中に鮮明に蘇って。

 

タブを開けて、

缶を手渡してくれた時に触れたあなたのその指先の感触も温度も、

全部、覚えているよ。

 

 

 

OFUSEで応援を送る