拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの子の心の中の引き出しに仕舞いたかった言葉

あなたへ

 

もしもね、ずっと先の未来で、お母さんが孤独死していたとしても、

あなたは何も気にしなくて良いからね

 

お母さんは、あなたと出会えたことが、

あなたと一緒に過ごせたことが、とても幸せだったから

 

例え、ひとりでその時を迎えたとしても、

幸せだったなって思いながら目を閉じるはずだから

 

だからあなたは、お母さんがどんな最期であったとしても、

何も気にしなくていい

前を向いて歩み続けなさい

 

これは、巣立ちを間近に控えた頃のあの子に話したことでした。

 

あの頃の私は、寂しさを感じながら、ずっと先の未来を思い描いていました。

きっと、巣立ち直後のあの子とは、頻繁に連絡を取り合うのだろうけれど、

巣立ちから、5年が経ち、10年が経ち、20年が経ち、

あの子が私の元から巣立った日のことが遠い思い出となる頃にはきっと、

あの子の側には私がいない毎日が当たり前となって、

頻繁に連絡を取り合うこともなくなって行くのかも知れないなって。

 

これから先、ずっとひとりで暮らす私は、

誰にも気付かれないままに、

ある日突然にこの世界を静かに去る可能性もあるのでしょう。

 

もしもそんな未来がやって来たとしたのなら、

あの子は自分を責めるのかも知れません。

 

もっと連絡を取っていたら

とか、

一緒に暮らしていれば良かった

とか、

ひとりでこの世界を後にした私を想い、

後ろを向いて座り込んでしまうのかも知れません。

 

それは、私が望まないあの子の姿です。

 

私は、あの子があの子らしく、自分のやりたいことを、

やりたいようにしているのを見ることがとても好き。

 

行きたい場所があるのなら、何処へでも行けばいい。

やりたいことがあるのなら、躊躇せずにやればいい。

 

その人生を存分に楽しみながら、見てきたものや感じたことを、

楽しげに話して聞かせてくれるあの子の声に耳を傾ける時間が、

私にとって掛けがえのない時間であることは、

あの子が巣立った後でも、きっと何も変わらないのでしょう。

 

もしもの未来を迎えてしまった時に、あの子が立ち止まってしまわぬよう、

この想いを伝えるのは今しかないのだと、

あの頃の私は、そんなふうに考えたのでした。

 

毎日、当たり前のように顔を合わせることが出来るからこそ、

雑談に紛れさせながら、本当は重い話を軽く見せて、

伝えられることもきっとあるのでしょう。

 

だって、巣立った後のあの子に、こんな話をしたのなら、

それを重く受け止めて、立ち止まってしまうかも知れないもの。

 

あの子は、この世界から大切な人がいなくなってしまうことが、

どのようなものであるのかをよく知っているから。

 

そして、あの頃の私は、

目新しい景色の中を、あの子がただワクワクとしながら歩めるように、

出来れば、雑談に紛れさせた私の言葉など、

忘れてしまえばいいとも考えてしました。

 

あの子が忘れてしまっても、

もしも必要な時がやって来たのなら、

あの子の心の中にある引き出しの中から、私が伝えた言葉たちが飛び出して、

必ずあの子を助けてくれるはずだから。

 

たくさん雑談の中のほんの一瞬のあの日の言葉たちは、

あの子の心の中の引き出しに仕舞っておく言葉として伝えたかった言葉でした。

 

今日の私は、あの日、あの子に話をしたことを思い出していました。

 

やはり、伝えるにはベストなタイミングを選ぶことが出来たなって、

こんな気持ちであの日のことを思い返していましたが、

もしも、私がこの世界を去る日が、

孤独死と呼ばれる去り方であったとしても、

本当は、ひとりなんかではないのかも知れませんね。

 

だってきっと、その時にはあなたが側にいてくれるはずだもの。

その時のあなたはきっと、静かにその手を差し出して、

あの夏から私がずっと探していた温もりをくれるのでしょう。

 

そう。それなら、きっと、

私の夢を目標へと変えてくれたご近所さんだったあのご主人も、

本当は、ひとりぼっちなんかではなかったのかも知れませんね。

 

一見して、孤独死という形であったとしても、

本当は、孤独にこの世界を去る人など、

誰一人としていないのかも知れません。

 

大切に守られながら、この世界へと誕生するように、

きっと誰もが大切に守られながら、

この世界を後にするものなのかも知れませんね。

 

 

 

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