拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

紙の世界とインターネットの世界

あなたへ

 

すいきんくつ【水琴窟】〈名〉

地中に埋めたかめに水を張り、その水面に水滴を落として、

その時に立てる微妙な音を楽しむ装置。

 

ふみばこ【文箱】〈名〉

はがき、びんせん、封筒などの手紙用品を入れる箱。ふばこ。

 

今日の私が、何気なくパラパラと巡っていたのは、

あの子のものだった国語辞典です。

 

これ使う?

俺、いらないんだけど

 

こんな言葉と共に、私の元へとこの辞典を持ってきたのは、

いつかのあの子が年末の大掃除をした日のことでした。

 

高校へ入学するにあたり学用品の一部として買った辞典でしたが、

きっと全く使わなかったのでしょう。

新品同様だったこれを捨てるのもなんだか忍びなくて、

あの日の私は、自分の部屋の片隅に置いておくことにしたのでした。

 

え?全然使ってないじゃん

 

その綺麗過ぎる姿にあの日の私は、思わずこんな声を上げましたが、

思えば私も、あの子くらいの頃は、辞典なんてほぼ使った記憶がありません。

 

持っているけれど、特に使わない。

子供にとっての辞典というのは、そのような存在であるのかも知れません。

だって、必要なことは大抵、教科書に記されていたりもしますから。

 

あの子に手渡されたあの日から、特に使うでもなく、

私の部屋の隅に置かれたままだった辞典を何気なく手に取って、

パラパラと巡りながら、私の目に留まったのは、

冒頭に上げた2つの言葉です。

 

水琴窟という文字に目が止まったのは、

水と琴の組み合わせがとても素敵だったから。

初めて見つけた言葉の意味を理解して、インターネットで調べてみれば、

様々な日本庭園の画像が出てきました。

見たことはあるけれど、名称までを知ろうとはしなかったアレを、

水琴窟と呼ぶことを知り、様々な水琴窟を眺めました。

 

そして次に、文箱という文字が目に留まったのは、

やはりこうして、あなたへの手紙を書くことが、

私の日常だからなのかも知れません。

 

手紙などを入れる箱に名前があることに驚きながら、

どのようなものであるのかをインターネットで検索してみれば、

彫刻なんかが施されていたり、綺麗な絵が描かれた箱が見つかりました。

どうやら、昔の人が使っていたもののようです。

 

今は、インターネットがとても身近になりました。

分からないことは、インターネットで検索をすれば、

なんでも分かる時代になりましたが、

こうして紙の辞典をパラパラと巡っただけで、

全く知らなかった言葉を知ることが出来ました。

 

紙の世界とインターネットの世界では、

使い方が異なるのかも知れませんね。

 

だって、水琴窟や文箱という言葉を知らなければ、

こうしてインターネットで検索することもありませんでしたから。

 

本来の使い方とは異なりますが、紙の辞典というのは、

これまで縁のなかった言葉と出逢わせてくれるツールでもあると、

言えるのかも知れませんね。

 

辞典をこのような使い方をしたのは、これが初めてのことでしたが、

過去の自分を振り返ってみれば、

これは、年を重ねることが出来たからこそ、

見つけることの出来た視点でもあるのでしょう。

 

大掃除をしたあの日のあの子は、辞典と共に、

若かった頃の私にはなかった新たな視点も一緒にくれたのかも知れませんね。

 

 

www.emiblog8.com

 

 

 

OFUSEで応援を送る