拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

難し過ぎる本

あなたへ

 

私があの本と出会ったのは、

今から、3年程前のことでした。

 

これまでの私が読んでいた本のジャンルから、

大きくかけ離れたその本を読んでみようと考えたのは、

視野が大きく広がるかも知れないと、

こんなふうに考えたことがきっかけでした。

 

それなのにです。

 

ワクワクとしながら、未知の扉を開いた私の目に飛び込んできたのは、

私が使ったこともない言葉たち。

 

ページを巡っても、巡っても、

そこには、私が知らない言葉ばかりが並んでいたのでした。

 

あの本は、私には難し過ぎる本であったのでしょう。

 

どうにも読み取ることの出来ない言葉たちが並ぶその世界には、

いつまで経っても引き込まれることがないままに、

言葉の意味を調べながら本を読み進める私を、

やがて襲って来たのは、睡魔でした。

 

何度、あの本に向き合ってみても、

すぐに襲ってくる睡魔に打ち勝つことが出来ないままに、

私は、毎回、心地の良い夢の中へと堕ちていきました。

 

もしも、この本の作者と話す機会があったとしたのなら、

私はきっと、その人の話す言葉の意味を、なにひとつ理解出来ないままに、

曖昧な笑みを浮かべながら、相槌を打つんだろうな

 

本に対して、こんな印象を抱いたのは、初めてのことでしたが、

あの本は、それほどまでに、

私にとって、難し過ぎる本であったようです。

 

僅かに読み進めたページへ挟んだ栞は、

そこからひとつも進まないままに、気が付けば、3年の月日が経っていました。

 

今日のこちらでは、朝から雨が降りました。

 

部屋の片隅へと追いやられたままだったあの本の存在を、

不意に思い出させたのは、雨の音でした。

 

この人生の中で、読むのを諦めた本は、

あの本が、初めてだったな

 

知らない言葉ばかりが並ぶ文字を追っていたあの頃のことを思い返しながら、

私には、まだまだ分からないことがたくさんあるのだと、

あの本がそう教えてくれていたことに、漸く気が付くことが出来たのは、

あの頃よりも、成長することが出来たからなのでしょうか。

 

今が、あの本と向き合うのに相応しい時期なのかも知れませんね。

 

本を開けば、間も無くに、睡魔が襲ってきてしまうかも知れませんが、

今夜は、3年振りに、あの本に向き合ってみたいと思います。