拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

声の歴史

あなたへ

 

もしもあの夏の運命が違っていたのなら、

あの夏から10の年齢を重ねていたあなたが、此処にいるはずでした。

 

此処にいるあなたは、どんなあなただったのだろうかと、

逢えなかったあなたについてを様々に思い描く私ですが、

ふと、気付いたことがあります。

 

幼かった頃と大人になってからの声が違うように、

歩んだ年の数だけ、きっと声も変わるんだろうなって。

 

もしも、あの夏の運命が違っていたのなら、

私が知っているあなたの声とはまた少しだけ違った声が、

此処には聞こえていたのかも知れません。

 

私たちが出会ったあの日から10年後のあなたの声が、

どう変わったかだなんて、考えたこともなかったけれど、

長く寄り添い歩み続けていれば、

ふと、気付く瞬間が訪れるものなのかも知れませんね。

出会ったばかりだったあの頃と、その時に聞こえるあなたの声の違いに。

 

きっとね、声にも歴史があるのよ。

 

その変化に気付いた後で、

あなたから名前を呼ばれたのなら、どんな気持ちがするのでしょうか。

 

此処に聞こえるはずだったあなたの声が、

どんなふうに変わっていたのかだなんて、

全く想像もつかないけれど、

やっぱり私は相変わらずに、あなたの声がとても好きで、

あなたに名前を呼ばれることも、とても好きなのでしょう。

だってあなたの声は、私にとって、特別だから。

 

ねぇ、あなた。

此処にまたひとつ、今度の約束をさせてください。

 

生まれ変わったらさ、

今度は、あなたの隣でずっとずっと一緒に年を重ねて、

ひとつひとつ、年を重ねて行くあなたの声を全部、聞いていたい。

 

どんなに年を重ねても、

ねぇ、とか、あのさ、なんて、

私の名前を端折ったりしないで、ちゃんと名前を呼んでね。

きっとそこにいる私も、

あなたの声も、名前を呼ばれることも、とても好きなはずだから。

 

ふたりで年を重ねて、おじいちゃんとおばあちゃんになっても、

ずっと変わらずに名前を呼び合ってさ。

そこに聞こえるお互いの声にも、

長い歴史を感じながら、歩んで行けたら良いですね。

 

その頃の私には、もう、この記憶はないけれど、

あなたの声が出会った頃とは変わったことに気が付いた時、

ふと、思うのかも知れませんね。

この声が聞きたかったのだと。

 

何故だか喜びに満ちて、私は、あなたの手を握り締めながら、

伝えるのかも知れません。

この時を待っていたよってさ。

 

そんな、いつかの未来を楽しみに待っているからね。

 

 

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