あなたへ
そちら側のあなたが、
たくさんの愛で満たされていますように。
あの子の歩む道が、
いつでも明るい光に照らされていますように。
そっと願いを込めて、
あなたとあの子の笑顔を思い浮かべました。
今日は七夕の日。
今夜のあなたは、どんな空を見ていますか。
どんな願いごとをしましたか。
今夜のこちら側からは、星は見つかりませんでしたが、
穏やかな風が、とても心地の良い夜です。
風に吹かれながら、今夜の私は、今から22年前、
初めてあの子の存在を知ったあの日のことを思い出していました。
まだ12mmだったあの子がエコー画像に映ったのを見て、
驚きと喜びが同時に湧き上がったこと。
それから、あの日のあなたの声。
あの日のあなたは、仕事だったけれど、
ひとりで病院へ行った私を心配して、何度も電話をくれましたね。
病院から出て、携帯電話の電源を入れてみれば、
それまでに見たこともないほどに、
あなたからの不在着信の知らせが並んでいました。
今思えば、なんだか笑ってしまうけれど、
数十分置きにあなたからの不在着信の知らせが並んだのを見たのは、
後にも先にも、あの時一度きりのことでした。
早速、電話を折り返してみれば、
あなたは直ぐに、電話に出てくれて。
あの子の存在を知らせた私に、あなたはなんて言ったか、覚えていますか。
第一声は、おめでとうございますって言ったのよ。
とても畏まった声で。
そうして、言ってくれたの。
これからも、ずっと一緒だよって。
ねぇ、あなたは覚えていますか。
22年前のあの日、2人で思い描いた未来を。
あれから22年が経ち、
家族3人、今は別々な場所から空を見る私たちだけれど、
きっといつでも、心はひとつ。
ずっとずっと、家族3人、一緒だよ。