拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あなたがこの世界で過ごした最後の日

あなたへ

 

ねぇ、あなた。

どうしてなの?

 

あなたに問い掛け続けたこの声を、

あなたは何処かで聞いていたのでしょうか。

 

ねぇ、あなた。

どうしてなの?って、

何度もあなたに問い掛けたこの声を、

もしも、何処かで聞いてくれていたとしたのなら、

あなたはどんな気持ちで聞いていたのだろう。

 

病床時のあなたが使っていたノートをこうして開くのは、

あの夏から何度目になるのだろう。

 

入院した日からの治療内容の記録から始まるノートを、

1ページずつ巡っていけば、やがて、空白のページが訪れて、

そこから更に数ページを巡ると、

あの、なぞなぞみたいなあなたの言葉へと辿り着きます。

 

1日1ページを使い記録されていたあなたのノートに、

最後に日付が書かれていたのは、手術を受ける前日。

あなたの意識が此処にあった最後の日です。

 

これまでの私は、そこから続く数ページの空白数にはさして気も留めずに、

ページを巡って、あの言葉へと辿り着いていましたが、

何故だかふと気になって、初めて空白のページ数を数えました。

 

1日1ページ。

あなたが使っていた通りに日付を数えてみれば、

本当なら、8月7日に使われるはずだったページに、

あのなぞなぞみたいな言葉が残されていたのです。

 

ねぇ、あなた。

どうして?

 

どうしてあなたは、8月7日のページに、あの言葉を書いたのだろう。

 

8月7日は、あなたがこの世界で過ごす最後の1日でした。

あの日は、ベッドの上で目を閉じたあなたの温かな手を握り締めて、

また明日来るからねって、

あなたとの明日の約束をした最後の日でもありました。

 

手術を受ける前のあなたは、

あんなに一時帰宅を楽しみにしていたはずなのに、

私たちだって、その日が待ち遠しかったのに、

それなのにあなたは、

あの頃の私たちが知らない何かを知っていたのでしょうか。

 

偶然にしては出来過ぎていて、必然にしては、苦し過ぎる。

ねぇ、あなた。

どうしてなの?

 

あなたを見送ってからの私は、何度こうして、

出来過ぎた偶然ばかりを見つけてきただろう。

 

ひとつ、またひとつとそれらを拾い集めながら、

いつしかそれらに対する呼び名を必然と変えて、

自分の中に、大きな疑問を持つようになって。

 

あの夏から、どんなに先へと歩んでみても、納得出来る答えが見つからないままに、

漸く、いつの日かその答えに辿り着ければそれでいいと、

そんなふうに考えられるようになったけれど、

こんなにも、不思議なものばかりが集まるとね、

やっぱり、私が求める本当の答えに、急いで辿り着きたくなってしまうよ。

 

ねぇ、あなた。

あの、なぞなぞみたいな言葉を書いた日のあなたは、何を考えていたの?

どうして、そのページを選んで、あの言葉を綴ったの?

どうしてあなたは、此処からいなくなってしまったの?

 

ねぇ、あなた。

もしもね、そこに隠された答えが、どんな答えであったとしても、

絶対に泣かないと約束したら、本当の答えを教えてくれますか。

 

 

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