あなたへ
あなたの夢を見ました。
夢の中の私は、何も見えない暗闇の中を、
上手に障害物を避けながら歩いていました。
上手に歩くことが出来ているにも関わらず、
ふと、不安な気持ちになってしまったのは、
僅かな光さえも見えない真っ暗闇の中にいたからだったのかも知れません。
現実世界で過ごす時間と同じように、
夢の中の私が無意識に呼んだのは、あなたの名前。
すぐ側にあなたがいる確信はなかったけれど、
暗闇の中、不安な気持ちであなたの名前を呼ぶと、返事が聞こえてきたのです。
此処にいるよって。
あなたの声が聞こえると、辺りが明るくなって、
道標のように私の少し前を歩くあなたの姿が見えました。
すぐ側にいてくれたあなたのその姿に安堵して、
夢の中の私は、更に歩みを進めることが出来たのでした。
夢の中の私が、何故、何も見えないままに、
障害物を避けながら歩くことが出来ていたのか、とても不思議ですが、
あの夢はきっと、今の私の本当の姿であるのかも知れないと、
ふと、そんな気がしました。
あなたはきっと、この世界で生きる私が、
大きな怪我をしないように、
上手に歩めるようにって、
その姿を見せないままに、
きっといつでも私の少し先を歩いて、守ってくれているんだなって。
あの夢の中、もしも私があなたの名前を呼ばなければ、
あなたはその姿を見せないまま、
ただ静かに、寄り添ってくれていただけだったのでしょう。
それでもきっと、暗闇の中、どんなに歩みを進めても、
私はあなたに守られながら、
先へ先へと上手に進んでいくことが出来たのだと思います。
夢から覚めた私には、もう、あなたの声は聞こえないけれど、
あなたの名前を呼ぶだけで、なんだかとても安心するのは、
その声が聞こえないままに、
あなたは、いつでも返事をしてくれているからなのかも知れません。
此処にいるよって。
目には見えない今のあなたの存在は、私たちの側から見ると、
時に脆く、儚さを纏った存在であるようにも感じてしまうけれど、
やっぱりあなたは、その存在までもが消えてなくなってしまったわけではなくて、
きっと、あの頃のまま、何も変わってなど、いないんだね。
私が不安な気持ちになると、あなたはその不思議な力を使って、
ちゃんとその想いを伝えてくれるから、私は此処まで歩んで来ることが出来たよ。
いつでも側にいてくれるあなた。
いつもありがとう。