あなたへ
ねぇ、あなた
今夜はスノームーンと呼ばれる満月なんですって
一緒にお月見しない?
あなたにこんな声を掛けたのは、一昨日、
あなたへの手紙を送ってからのことでした。
あなたへの手紙を送信した私の目に飛び込んで来たのは、
スノームーンという見慣れない言葉。
あなたを見送り、満月にも様々な呼び名があることを知りましたが、
スノームーンという名があることを知ったのは、あの日が初めてのことでした。
2月の満月を、スノームーンと呼ぶのだそうです。
あの日はよく晴れた日。
今夜はきっと月が綺麗に見えるだろうなって、思い立った私は、
何気なくあなたにも声を掛けたのでした。
一緒にお月見しない?って。
ベランダに出てみれば、
私の目に最初に飛び込んで来たのは、夜の飛行機でした。
やっぱり夜の飛行機は、とても綺麗だね
思わず呟きながら、
飛行機を目で追えば、直ぐに月が見つかりました。
キラキラと光る星が飛んでいるみたいな夜の飛行機は、
やがてあの日の夜の主役である大きな月を彩るかのように、
月の真下を通過して行きました。
それは、思わず息を飲む美しい景色でした。
偶然、家のベランダから飛行機を見つけることが出来るのは、
いつでもほんの僅かな瞬間だけ。
もしも、あの瞬間にベランダに出ようと思わなければ、
私はあの飛行機を見つけることは出来なかったのでしょう。
あれは、少しもずれることなく、
あの瞬間にベランダに出たからこそ、見ることが出来た景色でした。
上手くは言えないけれど、
私には、あの景色が、
あなたからの贈り物であるように感じました。
あの景色を眺めた私の胸の中へと満たされていったのは、
言葉を持たないままのあなたからの想い。
それはとても温かで、
深い愛に満ちた優しい色をした想いでした。
あの日は、
自分の持つ力の使い方についてを考えた日でもありました。
本当はね、ほんの少しだけ落胆にも似た気持ちを抱えながら、
あの手紙を綴った私ですが、
きっとあの日のあなたは、伝えてくれたんだね。
探さなくても大丈夫だよって。
ねぇ、あなた。
きっとあの瞬間の私たちは、一緒にお月見をしていたんだね。
とても素敵な夜をありがとう。