拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

チグハグの靴 -2024-

あなたへ

 

もう、この世界に、

あなたの存在を目視することは出来ないけれど、

それでもあなたの存在までもが消えてしまった訳ではないのだと、

あの夏からのあなたは、様々な方法で、

それを私に伝え続けてくれましたね。

 

目の前で起こり続けた不思議な出来事を見つめながら、

今のあなたは、ただ、私たちとはいる世界が違うだけなのだと、

少しずつ、少しずつ、こんな答えに納得をして、

私は少しずつ、

あなたがいないこの世界に、

あなたが隣にいないこの人生に、

慣れる決心が出来たのだと思っていました。

 

本当は、あなたに逢いたいけれど、

本当は、あなたの隣で笑っていたかったけれど、

・・・でも。

 

あなたを見送り、様々な角度から、

この人生を見つめるようになった私は、

やがて様々な夢や目標、見てみたい景色を思い描くようになって。

 

気が付けば、この人生の中で、

やりたいことや、

やらなければならないことをたくさん見つけることが出来ました。

 

特に、アレです。

 

次にこの世界であなたと出会う私は、

史上最高のいい女になっているはずだから、絶対に私のことを離さないでねって、

いつかの私は、こんな手紙を書きましたが、

日々、自分磨きに精を出しながらも、ふと思ったりもするのです。

史上最高のいい女って、どんな女よ?って。

 

並大抵の努力なんかでは、

きっと叶わない大きな目標までもを見つけてしまった今世の私は、

とても忙しい。

 

だって私は、この人生の時間全てを賭けた、

一大プロジェクトに挑んでいるのですから。

 

あなたを想いながら、

この生を生きることに覚悟を決めることが出来た私は、

心の何処かで、思っていたのかも知れません。

 

あなたに逢いたいとしながらも、

その、逢いたいという気持ちにはきっと、種類や段階のようなものがあって、

ギュッと締め付けられるような逃げ場のない痛みを感じる瞬間が訪れても、

きっとほんの僅かにずつ、

あの夏の私が知らなかった逢いたいという気持ちへと、

変化して行くものなのかも知れないと。

 

それはきっと、あの夏の私が感じていたものよりも、

穏やかで、緩い痛みを伴った感情なのだと、

無意識にも、いつの間にかこんなふうに、考えていたのかも知れません。

 

無意識に作り上げて来た考え方を突然に打ち砕き、

私の本当の気持ちを見つけさせてくれたのは、

あなたが買ってくれたピンク色の鍋でした。

 

私はまた、いつの間にか、

チグハグの靴を履いて歩んでいたのかも知れません。

そう。いつかのあの時のように。

 

どんなに大きな目標を見つけようとも、

あの夏からどんなに前へと歩み続けようとも、

私は、あなたがいないこの世界に慣れたわけじゃない。

本当は、慣れるしかなかっただけ。

 

それでも、この人生を大切に歩んで行こうと決めることが出来たのは、

あなたのお陰なのです。

だって、私は知ることが出来たもの。

生きることがどれだけ素敵で、掛け替えのないものであるのかを。

 

本当は寂しい

本当は逢いたい

本当は・・・

 

こんな想いを抱えたままで、

それでもこの人生を生きてみたいと思えるようになった私は、

何処かでチグハグな靴へと履き替えて、歩みを進めていたのでしょう。

 

いつか、本当の気持ちと向き合える時がやって来るまで、

自分自身を守るために。

 

あなたが買ってくれたピンク色の鍋はきっと、

私にチグハグの靴を脱ぐ時がやって来たことを知らせてくれたのでしょう。

 

私に、あの日の記憶を辿らせると、

封印を解くかのように、

私に本当の気持ちを見つけさせてくれたのだと思いました。

 

本当は、私はあの夏からずっと、

あなたに逢いたくて、堪らなかったのだと。

 

チグハグの靴を脱いで、ちゃんと揃った靴に履き替えて。

新しい朝を迎えた私はまた、此処から一歩ずつ歩みを進めながら、

あの夏から何も変わらない痛みを感じることもあるのでしょう。

 

そんな時には、

あぁ!もう!あなたに逢いたい!

今すぐ逢いたい!

でも生きたい!

私は新しい明日を迎えたいの!

ちゃんとこの人生歩んで、今の私が知らない景色を見てみたい!って、

こんな、ごちゃ混ぜな感情も全部、大切にしながら歩んで行くよ。

 

大丈夫。

どんなに痛みを感じても、

私はもう、泣いたりはしないから。

 

だって、今の私は、

この瞳に映る景色が、どれだけ素敵な景色であるのかに、

ちゃんと気付くことが出来たのだから。

 

 

 

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