あなたへ
いつも使っているピンク色の鍋を、
何気なく見つめた私の中へと不意に蘇ったのは、
あの日のことでした。
ねぇ、あなたは、覚えていますか。
ピンク色の鍋を買ってくれた日のことを。
あの日は、いつも通りに家族3人で買い物へと出掛けた日。
3人で様々な商品を見て回りながら、
このピンク色の鍋を見つけてくれたのは、あなたでしたね。
ピンク色の鍋をひとつ手に取ったかと思えば、
あなたは言ってくれたのよ。
これ、買ってあげるよって。
あなたはいつでもこんなふうに、
私好みのものを見つけると、
突然にプレゼントをしてくれる人でした。
賑わう店内
あなたの仕草
当たり前だった家族3人の形
不意に蘇った記憶を辿れば、
あの日の私が見ていた景色までもが鮮明に蘇って。
記憶の中にいるあなたが、私のすぐ側で笑ってくれたから、
思わず周りを見渡して、あなたを探してしまいました。
この世界の何処を探したって、
もう二度と、
あなたを見つけることは出来ないと知りながらも、
ほんの僅かにだけ、期待を込めて。
あの夏からの私は、
何度こうして、諦めて来ただろう。
不意に小さくため息を吐き出せば、
寂しい
苦しい
本当は、あなたと一緒に生きたかったって、
こんな感情がごちゃ混ぜに押し寄せて来て、胸の奥がギュッて締め付けられて。
胸の奥に感じる痛みをどうすることも出来ないままに、
ただ目を閉じてみれば、
ギュッと締め付けた痛みが私に教えたのは、
あの夏から何も変わらない本当の気持ちでした。
本当は、堪らなくあなたに逢いたい。
世界中の何処を探したって、あなたはもう何処にもいないのに、
こうして何処かにあなたを探したくなってしまう気持ちも、
そして、あなたを側に感じていたい気持ちも、
全部があの頃のままで。
あなたに逢いたい。
本当は、堪らなく逢いたい。
今日は、胸の奥が訴え掛ける気持ちを、
ただ大切に感じ切ってみるよ。
また新しい朝を迎えたら、
此処から見える景色の中を大切に歩んで行けるように。
1ページ目はこちらより↓↓