あなたへ
お母さん、知ってた?
俺ね、お母さんが淹れたコーヒーが好きなんだよ
これは、先日のあの子の言葉です。
コーヒーが飲みたいけれど、自分で淹れるのは面倒。
こんな気持ちが見え見えなあの子の言葉に笑いながら、
コーヒーを淹れました。
誰が淹れても、味は変わらないんだよ
いや、変わるよ
全然違う
お母さんが淹れたコーヒーは、特別に美味しいんだよ
ねぇ、あなたは覚えていますか。
これは、あなたと私の幾つものやり取りと、全く同じ会話です。
あなたを見送り、成長したあの子と、全く同じ会話をするだなんてね。
あの頃のあなたに言った私の台詞に、
あなたと全く同じ言葉を返すあの子に、なんだか、笑ってしまいました。
こんなに些細なところまで、あの子は、本当に、あなたとそっくり。
本当は、誰が淹れたって、コーヒーの味は、変わらないのでしょう。
それでも、
こんなふうに言われると、とても嬉しくなってしまう。
あなたによく似たあの子は、
あの頃のあなたが私にくれた気持ちと、同じ気持ちをくれました。
あの子の言葉に笑いながら、
コーヒーが飲みたいなって、
私の顔を覗き込む、あの頃のあなたの幾つもの笑顔を思い出して。