この公園は、相変わらずとても静かだ。
あれから、間も無くに新しい年を迎えると、その喜びも束の間に、
コロナウイルスなど呼ばれる未知のウイルスに遭遇した。
思えば、あれから大変な時間を過ごしてきた。
ここに来ることが出来たのは、とても久し振りだ。
青い空も、爽やかな風も、とても気持ちが良い。
「今日もいい天気ね。空がとても綺麗。」
空を見上げながら、無意識に呟いて、思わず笑ってしまう。
彼を見送ってから、7年が経った。
私は今、どのくらいの位置にいるのだろうか。
登っている段階では、自分の今いる位置は、案外分かり難いものなのかも知れない。
それでも、
目標を頂上に見ながら、一歩ずつ、
ちゃんと登ることが出来ていると実感できる。
頑張るのではなく、楽しむ。
その言葉は、少しずつ私の心の中に、深く根付いた大切な言葉となった。
此処で過ごした彼女との時間を、順番に思い出してみる。
とても、不思議な人だったな。
彼女は、結局、誰だったのだろう。
思えば、名前も、年齢も、彼女のことは、なにひとつ知ることが出来なかった。
けれどもしも、彼女にそれらを聞く機会があったとしても、
彼女は、きっと、こう言うのだろう。
「私が誰かなんてことは関係ないのよ。
あなたがどう変わるか、どう生きたいのか、それだけが重要なのよ。」
そうして、きっとまた突拍子もないことを言い出したのだろう。
「あの世って呼ばれる場所と、この世界を繋ぐ場所を見つけたのよ。
ねぇ、どこにあるのか、知りたいでしょう?」
そう、例えば、こんなふうに。
彼女らしい答えを見つけて、なんだか嬉しくなってしまう。
確かに、
彼女が誰かなんて、どうでも良いのかも知れない。
彼女が私にくれた時間は、私を大きく変えてくれた。
それこそが、私にとっての重要なことだったのだろう。
「ありがとう。
私も、あなたと過ごせて楽しかったよ。
私ね、今、楽しんで生きているよ。」
こんな言葉を風に乗せてみれば、
ふわりと優しい風が私を包み込んだ。
私は大丈夫。
もう、なにも怖くないよ。
完