拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

彼女 12

この公園は、相変わらずとても静かだ。

 

あれから、間も無くに新しい年を迎えると、その喜びも束の間に、

コロナウイルスなど呼ばれる未知のウイルスに遭遇した。

思えば、あれから大変な時間を過ごしてきた。

 

ここに来ることが出来たのは、とても久し振りだ。

青い空も、爽やかな風も、とても気持ちが良い。

 

「今日もいい天気ね。空がとても綺麗。」

空を見上げながら、無意識に呟いて、思わず笑ってしまう。

 

彼を見送ってから、7年が経った。

 

私は今、どのくらいの位置にいるのだろうか。

登っている段階では、自分の今いる位置は、案外分かり難いものなのかも知れない。

それでも、

目標を頂上に見ながら、一歩ずつ、

ちゃんと登ることが出来ていると実感できる。

 

頑張るのではなく、楽しむ。

その言葉は、少しずつ私の心の中に、深く根付いた大切な言葉となった。

 

此処で過ごした彼女との時間を、順番に思い出してみる。

とても、不思議な人だったな。

彼女は、結局、誰だったのだろう。

思えば、名前も、年齢も、彼女のことは、なにひとつ知ることが出来なかった。

けれどもしも、彼女にそれらを聞く機会があったとしても、

彼女は、きっと、こう言うのだろう。

 

「私が誰かなんてことは関係ないのよ。

あなたがどう変わるか、どう生きたいのか、それだけが重要なのよ。」

そうして、きっとまた突拍子もないことを言い出したのだろう。

 

「あの世って呼ばれる場所と、この世界を繋ぐ場所を見つけたのよ。

ねぇ、どこにあるのか、知りたいでしょう?」

そう、例えば、こんなふうに。

 

彼女らしい答えを見つけて、なんだか嬉しくなってしまう。

 

確かに、

彼女が誰かなんて、どうでも良いのかも知れない。

彼女が私にくれた時間は、私を大きく変えてくれた。

それこそが、私にとっての重要なことだったのだろう。

 

「ありがとう。

私も、あなたと過ごせて楽しかったよ。

私ね、今、楽しんで生きているよ。」

 

こんな言葉を風に乗せてみれば、

ふわりと優しい風が私を包み込んだ。

 

私は大丈夫。

もう、なにも怖くないよ。