拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

幸せの種

あなたへ

 

あなたへの手紙を書き終えた私は、

もう一度、あの頃の記憶を反芻しながら、

一瞬一瞬が全て過去であるのだと、改めて感じていました。

 

誕生日にMP3をプレゼントするよと笑っていたあなたを見つめた瞬間も、

迎えた私の誕生日の中にいた一瞬一瞬のあなたも、

そして、

素敵な時間をありがとうと、

穏やかな顔で微笑むあなたを愛おしく見つめた今のこの瞬間さえも、

今を感じた瞬間に過去へと変わり、私の記憶の中へと蓄積されたのだと、改めて、

生きることは、とても素敵で、儚くて、美しいものなのだと感じていました。

 

生きるとは、

大切なものが、どんどん増えて、

愛おしいものが、どんどん増えて、

自分が集めたそれらを、不意に振り返った時に、

明確な理由も分からないままに、

意味もなく、泣きたくなってしまうことなのかも知れないと、

いつかの私はこんな手紙を書きましたが、

それなら例えば、ほんの少しの嫌な出来事があった時や、

心配ごとに振り回されそうになった時、そして、

物事が上手くいかない時には、思い悩む時間を過ごすよりも、

そこから見える素敵なものへと視点をずらした方が、

より、素敵な瞬間を集め行くことが出来るのかも知れないと、

ふと、こんなふうにも、気が付くことが出来ました。

 

時には思い悩む時間も、大切とも言えるのかも知れませんが、

素敵なものへと視点をずらしてゆけば、

やがては、人生に集める一瞬一瞬全てが、

素敵なものばかりで溢れていくものなのかも知れないなって。

 

私は初めて、こんな視点を見つけたような気がします。

 

もしも、あのMP3が、

このタイミングで壊れてしまった意味を見つけるとするのなら、

そんな新たな視点を、

私に教えてくれるためだったと言えるのかも知れません。

 

そう。例えば、

あの日のあなたがプレゼントしてくれたあのMP3は、

あれからずっと先の未来の私が、

より豊かに生きるためのヒントが隠された幸せの種であったのかも知れません。

 

私の中へと新しい視点を芽吹かせてくれるタイミングがやって来て、

種が割れ、芽吹いた芽は私の中へとしっかりと根を下ろして。

形があるものは壊れ行くけれど、

胸の中へと芽吹いたばかりの小さな芽はやがて大きく成長し、

此処から先の私の瞳に写る景色は、

より鮮やかなものへと変わって行くのでしょう。

 

新しく私の中へと芽吹いた小さな芽を感じてみれば、

胸の中が温かなものでいっぱいになりました。

 

ほんの少しだけ視点を変えてみれば、

これこそが、

実はあの日のあなたからのプレゼントだったのかも知れないと、

そんなふうにも思えました。

 

あなたがくれたこの小さな芽を大切に育てながら、

此処から先のこの人生も、大切に歩んで行くよ。

 

 

www.emiblog8.com

 

OFUSEで応援を送る