あなたへ
ねぇ、あなた。
ここ最近の私は、見えない力や世界についてを考えていましたが、
間違えて、決して開けてはならなかった記憶の蓋までもを開けてしまったようです。
どうにかもう一度、記憶の蓋を閉じようと努力してみたものの、
忘れようと思えば思うほどに、記憶が鮮明に蘇ってしまうので、
今日はあなたにも、あの話をしてみたいと思います。
これは、私が体験した怖い話です。
そう。あれはまだ、あなたと出会う前のことでした。
当時の職場で出会ったのは、とある男性。
年齢が近く、互いの共通点もあったことから、
打ち解けるまでにはそう時間が掛からなかった私たちは、
やがて、仕事終りには時々、
一緒に遊びに出掛けるようになっていきました。
共に過ごした時間の中で様々な話をしながら、
彼には、ある力が備わっていることが分かりました。
どうやら、彼には普通の人には見えないものが見えているようなのです。
要するに霊感です。
彼にはそちら側の方たちが、見えているようだったのです。
今回の私の中に蘇ってしまったのは、
彼と過ごした時間の中での幾つかの恐怖のエピソード。
そんな中でも、特に怖かった2つの出来事をあなたにも話してみたいと思います。
あれは、話の流れから、
夜景を観に連れて行って貰うことになった日のことでした。
その場所は、きっと知っている人があまりいない場所なのでしょう。
殆ど車通りのない道を通ったことを、今でもよく覚えています。
到着したのは山の上であるにも関わらず、視界を遮るものはなく、
見下ろした街並みは、
キラキラと光る宝石箱を見つめているようにも感じました。
私は、とんでもなく綺麗な夜景に圧倒され、暫しの間、言葉を失いました。
この日の出来事は楽しかった思い出となるはずだったのに、
この後、あの出来事が起こるのです。
夜景を楽しんだ帰り道、何故だか急に右肩だけに痛みを感じたのです。
あの時の私はなんとなく、とても嫌な予感がしました。
そう。例えば、見えない何かがついてきてしまったような嫌な予感、
とでも言えば良いのでしょうか。
そんな嫌な予感を感じたまま、
黙っていた私の右肩を突然に払ったのは、彼でした。
あれは、信号待ちの間の出来事。
赤信号で車を停車させた彼は、
突然に助手席に座った私の右肩を払い言ったのです。
今、右肩痛くなかった?
手が乗っていたけれど、もう大丈夫だよ と。
もう、あの瞬間に、
綺麗な夜景に感動したことなど、私の中からすっかり消え去りましたよ。
手が乗っていたとはなんですか?
どうやら、あの夜景スポットへの通り道の近くには、
あまりよろしくない場所があったらしく、
恐らくは、そこを通ったのが良くなかったのだとか。
家に帰ったら、念のために肩に塩をかけておけばいいよと、
こんなアドバイスを貰った私は、
彼に言われた通り、家に帰るとすぐさま肩に塩を振りかけました。
すると、スッと肩が軽くなったのです。
あまり思い出したくはなかった記憶ですが、
こうして記憶を辿ってみれば、あれは初めての感覚でした。
では、もうひとつのエピソード。
あれは、私があの場所へと行ってしまったことがきっかけでした。
あの場所。
それは、あの子が初めて怖い体験をしたあの心霊スポットです。
そう。だって、あの頃の私はまだ、
行き先の選択肢の中に、
心霊スポットが入ってしまう年頃でしたから。
友人たちと、遊び半分であの心霊スポットへ行った翌日に、
それは起こりました。
いつも通りに仕事をしていると、
突然に、背中に冷たい風を感じた私は、
なんとも言えない恐怖心に襲われました。
なんだか分からないけれど、とても怖いと感じたのです。
動揺した私は、彼に近付いて話し掛けようとしたのですが、
うわ!こっち来るな!
そう言って、彼は足早に私から離れて行ったのです。
そうして、彼は遠くから更に言いました。
お前さぁ、昨日、どこか変なところに行っただろ
何を連れて来たんだよ と。
どうすることも出来ないままに、
泣きそうな気持ちで立ち尽くした私の耳にやがて届いたのは、
もう行ったから大丈夫という彼の声。
あの時の私の後ろには、
よろしくない感じの存在がいたのだそうです。
結局のところ、
私が連れてきてしまったわけではなさそうだとのことでしたが、
心霊スポットへは二度と行くなと叱られました。
思えば、あれからの私は、
心霊スポットと呼ばれる場所へ遊び半分で行くことはしなくなったのでした。
これらは、出来れば思い出したくはなかった記憶ですが、
こうして記憶を辿ってみれば、
私はこの人生の中で、
目には見えない世界が見えている人と出会っていたことが分かりました。
そして、彼と過ごした時間の中を改めて振り返ってみれば、
私が感じた見えない何かの存在を、確かな存在として、
彼が私の目の前で立証してくれていたということにもなるのでしょう。
出来れば、体験したくはなかった出来事ではありましたが、
あの恐怖体験の中で感じた私の予感が本物であったのなら、
あなたを見送ってからの私が感じるあなたの気配も温もりも、
そして、私の中へと届くあなたの想いもまた、全てが本物なのでしょう。
私は特別な力など何も持ち合わせてはいないと思い込んでいましたが、
私は、自分が持つ力を、
自分で封印しようとしていただけに過ぎないのかも知れませんね。
と言うことはです。
これまで、気のせいだと思うことにしていた色々なこともまた、
本物だと認めざるを得なくなってしまいました。
これは困りましたよ。
なにぶん、私は怖がり出身です。
あなた以外はちょっとね、ですよ。
それなら・・・そう。アレしかありません。
もう!あなたしか駄目なんだからね!を、私の新しい魔法の言葉として、
此処からを生きて行こうと思います。
P.S
ここ最近の私は、慌ただしく過ごしていましたが、カレンダーを見て驚きました。
今日は節分ではありませんか。
今日の私は慌てて豆を買いに出掛け、早速、あなたの場所へお供えしましたが、
気付いてくれたでしょうか。
そう。昨年同様に、今年も味が付いた豆にしました。
昨年のアクシデントから思い付いた案でしたが、
こちらの方が、あなたも気に入ってくれるような気がしました。
我が家の節分は、これからもこのスタイルにしましょうね。