拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

必要のない教えは全部捨てなさい

あなたへ

 

必要のない教えは、遠慮せずに全部捨てなさい

 

これは、巣立ち前のあの子に話したことのひとつでした。

 

私たちは、たくさんのことをあの子に教えて来ましたね。

それら全ては、

あの子が幸せな人生を歩むことが出来るようにと願いながら、

教えたことでもありました。

 

あなたは、あの子と共に過ごした12年間の間に、

幾つくらい、あの子に教えたことがあったでしょうか。

私は、あの子と共に過ごした21年間の間に、

幾つくらい、あの子に教えたことがあっただろう。

 

それらは全て、

あの子が歩む人生を、明るく照らしてくれますようにと願いながら、

教えてきたものでもありましたが、

きっと、私たちがあの子に教えたことの中には、

時代に合わない考え方や、価値観も含まれていた可能性もあれば、

あの子にとっては必要のない教えも含まれていたのかも知れないと、

あの子の巣立ち前の私は、こんなことを考えていました。

 

私たちが正しいと信じていたことであっても、

あの子の人生においては、

真逆に答えがあることも、きっとあるのでしょう。

 

此処から巣立って行けば、

日々のあの子が何を学び、何を感じて、

何に悩むのかを知ることは出来ません。

 

時には、私たちの教えが、

あの子の助けとなれる場面もきっとあるのでしょう。

ですが、もしかしたら、

私たちの価値観と、あの子の価値観の違いから、

悩んでしまう場面もあるのかも知れません。

 

あの子が幸せな人生を歩むことが出来るようにと願って、

あの子に教えた様々なことは、

あの子を苦しめるものであってはならないと思いました。

 

だからあの日の私は、あの子に伝えたのでした。

 

私たちは、たくさんのことを教えてきたけれど、

自分にとって必要のない教えは、遠慮せずに全部、捨てなさい。

自分が正しいと感じたことを信じて、自信を持って歩んで行ってねと。

 

きっとね、あの夏の運命が違っていて、

此処にあなたがいてくれたとしても、

私たちは2人で、

巣立ち前のあの子に、同じことを伝えたのでしょう。

 

だって私たちは、あの子が生まれた日から、毎日、毎日、

どうしたらあの子が幸せな人生を歩んで行けるのかと、

いつでもそればかりを考えていましたもの。

 

日中の穏やかな太陽の光と、

少しずつ鮮やかになる景色を感じながら、

今日の私は、昨年の丁度、今頃、

あの子の巣立ちが間近に迫った頃の私が過ごした日々を思い出していました。

 

こうして振り返ってみると、1年前の私は、寂しい気持ちを抱えながらも、

これから巣立つあの子が、

どうしたらより幸せな人生を歩んで行けるだろうか、

今の私は、あの子に何が出来るだろうかと、

こんなことばかりを考えて過ごしていたように思います。

 

いつの日か、

あの教えは、俺には合わなかったよって、

例えば、あの子のこんな声を聞ける日も来るのかも知れません。

 

その時には、

あの子が自分で見つけた考え方に触れることが出来るのでしょう。

 

その時の私の中には、きっと、

見たこともないような、新しい色が染まることでしょう。

 

そんな日が来ることも、なんだかとても楽しみです。

 

 

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