今日もまた、お気に入りの公園に来た。
ここは、空が綺麗に見える場所で、
人通りも少なく、ほぼ貸切で時間を楽しむことが出来る。
春になると、一面に菜の花が咲くところが、特に気に入っている。
この場所は私にとって、とても特別な場所だ。
私は、5年前の夏に最愛の夫を亡くした。
当時、中学1年生だった息子と私は、その意思もないままに、
死によって、突然、彼と引き離されてしまった。
この公園は、家族3人の思い出の場所だった。
いつの頃からか、1人で散歩を楽しむようになった私は、
度々ここへ訪れては、ベンチに座って空を見上げるようになった。
寂しい時や、
ひとりで考えごとをしたい時、
何も考えたくない時も・・・
まぁ、一言で言えば、どんな時も、
私は、吸い込まれるように、この場所へと来てしまうのだ。
今日も、ここはとても静かだ。
ベンチに座ると、広い空を見上げて、深呼吸をした。
考えるのは、彼のこと。
この空の向こう側、きっと、何処かに彼がいるのだろう。
とても小さくてもいい。何処かに彼を見つけられたら。
視力が弱いくせに、遠い空をじっと見つめ、彼は何処にいるのだろうかと、
ただ、空を見上げることだけに集中した。
瞬きをする度に、少しずつぼやけていく視界を拭って、
もう一度、しっかりと空を見上げた。
彼に、逢いたい
どんなに目を凝らしてみても、爽やかな青い空がこの瞳に映るだけで、
今日も、そこに彼の姿を見つけることは出来なかった。
ほんの少し、落胆しながら、小さなため息をひとつ吐き出すと、
秋の爽やかな風が、私の頬を撫でるように通り過ぎていった。