拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

彼女 2

今日もまた、お気に入りの公園に来た。

ここは、空が綺麗に見える場所で、

人通りも少なく、ほぼ貸切で時間を楽しむことが出来る。

春になると、一面に菜の花が咲くところが、特に気に入っている。

この場所は私にとって、とても特別な場所だ。

 

私は、5年前の夏に最愛の夫を亡くした。

当時、中学1年生だった息子と私は、その意思もないままに、

死によって、突然、彼と引き離されてしまった。

この公園は、家族3人の思い出の場所だった。

 

いつの頃からか、1人で散歩を楽しむようになった私は、

度々ここへ訪れては、ベンチに座って空を見上げるようになった。

寂しい時や、

ひとりで考えごとをしたい時、

何も考えたくない時も・・・

まぁ、一言で言えば、どんな時も、

私は、吸い込まれるように、この場所へと来てしまうのだ。

 

今日も、ここはとても静かだ。

ベンチに座ると、広い空を見上げて、深呼吸をした。

考えるのは、彼のこと。

この空の向こう側、きっと、何処かに彼がいるのだろう。

とても小さくてもいい。何処かに彼を見つけられたら。

視力が弱いくせに、遠い空をじっと見つめ、彼は何処にいるのだろうかと、

ただ、空を見上げることだけに集中した。

瞬きをする度に、少しずつぼやけていく視界を拭って、

もう一度、しっかりと空を見上げた。

 

彼に、逢いたい

 

どんなに目を凝らしてみても、爽やかな青い空がこの瞳に映るだけで、

今日も、そこに彼の姿を見つけることは出来なかった。

 

ほんの少し、落胆しながら、小さなため息をひとつ吐き出すと、

秋の爽やかな風が、私の頬を撫でるように通り過ぎていった。