あなたへ
あなたがこちらにいた頃は、
私の前髪が伸びると、いつも、あなたが切ってくれましたね。
手先が器用なあなたは、いつもきれいに切ってくれた。
最後に、あなたに前髪を切ってもらったのは、
2年前の、梅雨の頃だったでしょうか。
新聞紙を引いて、
真剣に私の前髪を切るあなたの顔が時々、可笑しくて、
笑っちゃう私に、
「曲がるぞ!」って、あなたは怒るけれど、
やっぱりそれにも笑っちゃう私に、あなたも、一緒に吹き出した。
あなたは、私の前髪を切る度に、どんどん上達して、
美容師さんにも負けない腕前でしたね。
あなたが、そちら側へ逝き、
私は、自分で前髪を切るようになりました。
あなたの切り方を思い出し、
あなたに切ってもらっている事を想像してみたけれど、
やっぱりちょっと、曲がってしまいます。
いつか、上手に切れる時が来るでしょうか。
この前髪が伸びたらまた、挑戦してみたいと思います。
今度はもっと、鮮明にあなたの事を思い出しながら。