拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

2020-01-01から1年間の記事一覧

KANATA 23

朝、起きると、あの子に、昨日のお礼と、元気になったことを連絡した。 あの子のお陰で、昨夜の体調の悪さが嘘のように、元気になった。 家中の窓を開放し、空気を入れ替え、気分を上げるために、部屋中の掃除をしようと思っていたところで、 無理はしないで…

KANATA 22

体が怠い。恐らく、熱があるのだろう。体調を崩したかも知れない。 今夜までに、熱は下がるだろうか。 いつも通り、アラームの音で、目が覚めたものの、体を起こすのも面倒で、布団の中で横になったまま、携帯電話の画面を見つめた。 すると、アプリが勝手に…

KANATA 21

いつからだろう。そう。 彼とアプリで繋がるようになってからだ。 「だって、私、もう、おばあちゃんなのよ。」 思わず、独り言を言いながらも、なんだかとても、ワクワクする。 「でもね、きっと、夢を持つのに、遅すぎるなんてことはないわ。」 ワクワクが…

KANATA 20

「こんなふうに、またあなたと一緒に、この日を過ごせるだなんて、 思ってもいなかったよ。おめでとう・・・って言ってもいいのかな。」 『ありがとう。もちろんだよ。』 「あなた。お誕生日、おめでとう。」 我が家では、彼が亡くなってからも、毎年、彼の…

KANATA 19

アプリの創設者。名は、カイトと言う。彼もまた、若くにこちら側へ来なければならなかった人間のひとりだった。 カイトの妻は、彼の死後、寝込むことが多くなり、表情がなくなった。カイトは、一時も離れることなく、彼女には聞こえない声で、語り続けた。 …

KANATA 18

「ねぇ、あなた。これ見て?凄いでしょ?」 これは、今日、あの子から届いたアルバム。私が、ひ孫に会いに行った時の写真や、ひ孫のその後の成長が映った写真。それから、お正月の時の写真を、アルバムにして、送ってくれた。 アルバムを180度に開くと、写真…

KANATA 17

クリスマスを過ぎると、毎年、慌ただしさを感じる。 年を重ね、静かな日々を送るようになったら、年末特有の慌ただしさを感じることもなくなるのだろうかと、いつか、そんなことを考えたこともあったけれど、そこに年齢は、関係なかったようだ。 今年も例外…

KANATA 16

プレゼント、ありがとう。 今日の私たちは、アプリで繋がるなり、同時に同じ言葉を言い合って、笑ってしまった。 『俺からのクリスマスプレゼントって気付いてくれてたんだ?』「うん。」 気付かないわけがない。 彼が亡くなってからの毎年、クリスマスには…

KANATA 15

小さなクリスマスツリーを飾って、彼と一緒に、ケーキを食べた。今日は、クリスマスイブ。 「雪、降らなかったね。」 数十年振りに過ごす、彼と2人きりのクリスマスだから、雪が降ったら、もっと、素敵だっただろうなって、なんとなく、そんなことを考えなが…

KANATA 14

「なんだか、若返ったんじゃない?」「なにか始めたの?」 いつものお茶飲みメンバーたちが、一気に詰め寄ってきた。 特に何もしていないと言う私の言葉を信じてもらえずに、この日の話題は、主に、私の普段の生活についてとなった。 「化粧品変えたの?」「…

KANATA 13

「昨日は、ごめんなさい。」 アプリで繋がるなり、私は彼に頭を下げた。昨日、言いすぎてしまったことも、知らない間に、彼を傷付けていたことも、全部。 『俺こそ、ごめん。泣かせるつもりじゃなかった。』 「昨日、あなたの夢を見たの。」 『うん。逢いに…

KANATA 12

私よりも、ずっと年下になってしまった彼に、 あんなふうに怒るだなんて、大人気なかった。 次に、彼と逢う時には、いい女でいたいと思ってた。 それなのに、あんなに感情的になって、馬鹿みたい。 彼が亡くなってから、伝えたい言葉を、いつでも伝えること…

KANATA 11

彼と、アプリで繋がるようになってから、 体が軽く、身のこなしが軽くなった気がするのは何故だろう。全身から、やる気が漲ってくるのだ。 今日の私は、気合いを入れて、朝から、押し入れの掃除を始めた。暫く、開けることのなかったこの中には、何が入って…

KANATA 10

彼のところに、お供えした物が、 そのまま届いているとは、思わなかった。私は、これまで、 香りが届くとか、そのような形だと考えていた。 どうして早く、言ってくれなかったのだろう。 今日から、アプリで彼と話す前に、コーヒーを淹れることにした。 彼の…

KANATA 9

その夜の画面の向こう側の彼は、嬉しそうに笑っていた。 『親父だって。オヤジ!ぷっ!』 今日、あの子が、お菓子をお供えしながら、 小さな声で、声を掛けた時に、 親父と言ったことが、可笑しかったらしい。 彼が亡くなるまでのあの子は、 彼のことをパパ…

KANATA 8

あの子は、この家を出てからも、時々、顔を出してくれる。それは、ひとりになった私を気遣ってのことだろう。あの子のこういう優しさには、本当に感謝している。 今日は、この辺りで仕事があったからと、顔を出してくれた。 あの子は、家に帰ってくると、ま…

KANATA 7

彼が側にいる。 それは、彼を見送ってから、 これまでの私も、度々感じてきたことだった。 例えば、泣いている時や、寂しい時には、いつでも、彼の温もりに似たふわりとしたものが側にあった。 彼が最後に話してくれた言葉を反芻する。 あれは、やはり、彼だ…

KANATA 6

『・・・うん。長い間、ひとりにして、悪かった。』 「え?急に、どうしたの?」 一緒に笑っていた彼は、急に真面目な顔をして、本当は、ずっと一緒にいたかったことや、この世を去らなければならない理由があったことを話してくれた。 『俺は、どう頑張って…

KANATA 5

翌朝は、いつもよりも早くに目が覚めた。昨日のことを思い出す。あれは夢だったのだろうか。彼の、また明日の声が鮮明に蘇る。 「夢・・・だったの?」 慌てて飛び起きて、携帯電話の画面を確認してみると、 やはり、ロックを解除した右下には、【KANATA】の…

KANATA 4

「え?」 画面を凝視したまま、動くことが出来なかったのは、 これが写真ではないと分かったからだ。 何故なら、彼の背景に映るものが、動いている。 見たこともない花が揺れ、彼の後ろを、 ゆっくりと馬が歩いて行ったのが見えた。 瞬きをすることも忘れて…

KANATA 3

翌日も、いつも通りに、目が覚めた。 「おはよう。」まずは、夫の遺影に、朝の挨拶をするのは、 あの頃から、ずっと何年も欠かしたことのない私の朝の習慣だ。 それから、お化粧をして、身なりを整える。これも、若い頃から変わらない私の習慣。 年を重ねれ…

KANATA 2

亡き夫に手紙を書き始めてから、もう、何年が経っただろう。 夫が亡くなってから、2年が経とうとする頃から、数十年、私はこうして、 夫への手紙を書いては、インターネットに掲載し続けてきた。 きっと、空の彼方にいる夫の元へ、この手紙が届きますように…

KANATA 1

※※※ これは、ずっと、ずっと先の、未来のお話。 亡き夫の分まで生きて、 おばあちゃんになりたいという、 私の夢が叶った先の物語です。 ※※※ あなたへ あなたを見送ってから、 これまでの日々のことを振り返っていました。 あの日から、私の歩むスピードは、…

秋の肌寒さに

あなたへ 寝起きの肌寒さに、思わず、長袖の上着を羽織ったのは、 今朝のことでした。 ここ数日のこちらでは、朝晩の肌寒い空気に、 より一層、秋の深まりが感じられるようになりました。 つい最近までは、 エアコンがなくては眠ることが出来ませんでしたが…

元気に会える日を楽しみに

あなたへ コロナウイルスに怯えながら生活をするようになってから、 何ヶ月が経ったでしょうか。 緊急事態宣言が解除され、 以前のような生活に戻った人。 自粛生活を心掛ける人。 その生活の仕方は、様々ですが、 我が家では、自粛を心掛けた生活を続けたま…

永遠の親孝行

あなたへ 子供はね、3歳までに親孝行をするんだよ 3歳までは、本当に可愛いんだよ 天使だね その後はね、お金だよ 子供が大人になるまでに、いくら掛かるか知ってる? 1000万円以上掛かるんだよ 3歳までに、その可愛さで、一生分の親孝行をしてもらったら、 …

空に描かれた手紙

あなたへ あなたから、あの子へ宛てた手紙を見返していました。 これは、あの子の部屋の大掃除で見つけた、いつかの幸せのカケラ。 何度読み返しても、やはり、 いつ、どんな時の手紙であったのか、思い出せないままに、 この文字に込められた、あなたの想い…

新しい発見

あなたへ 高校卒業を機に、髪を伸ばし始めたあの子は、 近頃、ヘアアイロンを器用に使って、 パーマ風の髪型を楽しんでいます。 こんな髪型、どうかな あの子から、突然、パーマヘアの画像を見せられたのは、 数週間ほど前のこと。 どうだろう 全く想像のつ…

秋の気配

あなたへ 静かな公園を散歩したい 長かった梅雨が明け、連日の青空を眺めながら、 お気に入りの公園の景色を思い浮かべていたのは、 8月に入ったばかりの頃の私でした。 足の痛みに耐えられず、何処へも行けないままに、 今年の夏は、ベランダに出ては、 空…

最後の我儘

あなたへ あなたに最後の我儘を言ったのは、 夢の中でのことでした。 あれは、あなたを見送り、間も無くの頃のこと。 夢の中のあなたに、 まだこっちに来てはいけないと諭され、 あなたの側へ行くことを諦めた私は、 あなたに我儘を言ったのでした。 それな…