あなたへ
これで、最後ね
春休みの少し前、
あの子のこんな言葉と共に渡されたのは、
1年生最後の模型の作品でした。
1年間を通して、様々なことを学んできたあの子の最後の作品は、
初めて作ったそれよりも、随分と進化し、
発想も、とても豊かで面白い作品でした。
この1年間に作った模型を眺めてみると、
初めて作った模型は、小さな作品でしたが、
作る度に、進化を遂げたあの子の作品ですは、
何故だか、回を重ねるごとに、どんどん大きく、
存在感のある作品へと変わっていきました。
大きさには、特に決まりはなかったようですが、
思うままに仕上げると、大きくなってしまうのだとか。
あの子が作品を持ち帰ってくる度に、
あなたにもよく見えるようにと、部屋中を見渡し、
スペースを作っては、飾ってきましたが、
気が付けば、我が家の家族の部屋は、
1年分のあの子の作品たちで、いっぱいになりました。
複雑で、繊細な作りの作品たちは、実は、掃除がちょっと大変です。
掃除をしながら、パーツが取れてしまった日には、とても落ち込みました。
この作品たちを、綺麗に保存するためには、
仕舞っておくことが、きっと一番なのでしょう。
本当は、ずっと飾って置きたかったけれど、
綺麗なままで取っておくために、
あの子の作品をダンボールへ入れて、仕舞うことに決めました。
作品、ひとつひとつを手に取って、眺めてみれば、
捨てちゃえば?なんて、
あの子ったら、こんなことを言い出しましたが、とんでもありません。
あの子が作ったこれらは、私の大切な宝物。
いつの日か、社会人になったあの子には、
たくさんの模型を作る機会があるのでしょう。
きっと、回を重ねる毎に、今よりも、更に、
上手なものになっていくのだと思います。
でも、それらを私が見る機会など、きっと、訪れる日はないのでしょう。
きっと、今、此処にあるのは、
あの子が、私に見せてくれる最後の作品になるのだと思います。
あの子が自由に作った作品は、
あの子の夢がたくさん詰まった、私の宝物たちです。
あの子の作品を眺めていると、あなたの笑顔が思い浮かびます。
この1年間にあの子が作った作品たちは、
きっと、あなたにとっても、大切な宝物。
あの子が作った作品たちは、
あなたと私にしか価値の分からない、
大切な家宝にしましょうね。
先日、あの子は無事に、2年生に上がりました。
2年生では、模型の授業がない代わりに、
実験の授業が始まるのだそうです。
どんな実験をするのやら、
これからのあの子が、どんな話を聞かせてくれるのか、
とても楽しみですね。