あなたへ
ねぇあなた
ここに飾っておくね
あの日の私のこんな声に、
あなたはどんな言葉を返してくれたのだろう。
新しい年明け早々に、あなたの場所へ飾ったものは、
きっとあなたにとっては、とても懐かしいものだったでしょう。
これは、あなたが高校時代に励んでいた部活動での記念品です。
今年のお正月に、
あなたの実家へと新年のご挨拶へ行った時にね、あなたのお母さんがくれたのよ。
掃除をしていたら、こんなものが出て来たんだけれど、持って行く?って。
あなたへ手を合わせた時や、
何気なくあなたの顔を見つめた時。
あの日から、自然と目に入るのは、とても存在感のあるこの記念品。
その度に私の中で蘇るのは、この記念品に纏わるエピソードです。
あの日のお母さんが聞かせてくれたのは、
あなたが高校生の時に出場した大会の日のことでした。
遠方での大会であったため、
お母さんがあなたを送迎したのだという言葉から始まったそのエピソードには、
その日のお母さんが見た記憶が詰まっていました。
あなたが好成績を収めたことや、
どんな顔をして帰りの車に乗り込んだのか、
そして、その日のあなたの言葉。
お母さんの言葉ひとつひとつに声に耳を傾けながら、私は、
あなたは、私と出会う前からあなたはあなただったんだなって、
こんな気持ちを感じていました。
集中力が高く、本番に強いあなた。
クールに振る舞いながらも、
本当は純粋で、繊細な心の持ち主であるあなた。
お母さんの記憶の中にいるあなたが、
私が良く知るあなただったから、なんだかとても嬉しくて。
そうして何度も、あなたのお母さんが話してくれたエピソードを反芻するうちに、
アルバムでしか知らないはずの高校3年生だったあなたの姿が、
不意に見えたような気がしました。
この世界にいるあなたとの思い出が増えることは、もうないけれど、
あなたのお母さんが、時々こうして記憶を分けてくれるから、
この世界にいたあなたの姿は、
ひとつ、またひとつと、この胸の中へと集まって行きます。
あなたのお母さんが分けてくれる記憶の中にいるあなたの姿は、
お母さんにとってそうであるように、
私にとってもまた、大切な宝物です。
この記念品を手にした頃のあなたは、
どんな未来を思い描いていましたか。
そこからずっと先の未来で出会い、
やがてあなたと共に人生を歩むことになる私が、
この記念品を、ずっと大切にするからね。