拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

本当は苦しくて堪らない

あなたへ

 

そっか。 この髪はもう、

あなたが撫でてくれた髪じゃないんだな。

 

何の脈絡もなく、不意にこんな気持ちを見つけたのは、

先日の朝のことでした。

 

あの夏からの私は、もう、何度くらい、美容室へ行っただろう。

 

あなたが撫でてくれた髪を切るのが嫌で、

髪を切ることが出来なかった頃があって、

やがて、ふと思い立って、髪を切りに出掛けることが出来た日があって。

 

あなたを見送ってから、初めて髪を切ったあの日の私は、

いつかは、あなたが撫でてくれた髪がすっかりと入れ替わってしまっても、

あなたが髪を撫でてくれた感触までもが、

消えてなくなってしまうわけではないのだと、納得した筈だったのに。

 

それなのに、先日の私の中へと不意に見つけた気持ちは、

朝から、私を酷く動揺させたのでした。

 

生きているということは、髪が伸びることであり、

髪が伸びれば、それを切って整えることが必要で。

それはごく当たり前のことである筈なのに、

その当たり前に、納得などしたくない自分の気持ちを見つけてしまったのです。

 

あの夏からの私は、思えば随分と成長することが出来ました。

涙を拭ったからこそ、見えるようになった景色があって、

この人生を大切に生きようと思えるようになったからこその、

楽しみ方だって見つけました。

 

そんな今の自分に対して、誇らしさだって感じるようになった筈なのに、

いつの間にか上手に隠せるようになった本音が不意に顔を出せば、

どうにもならない痛みは、私の胸の奥を強く掴み続けたのです。

 

何処かにあなたを探したくなって、

あの頃に戻りたくなって。

 

記憶を辿る以外の方法を見つけることが出来ないままに、何度でも、

この髪を撫でてくれたあなたの姿を、あなたのその手の感触を反芻したのなら、

結局はまた、納得するしかないのです。

 

私は、この人生を、しっかりと生きたいのだから、

前を向くしかないのだと。

 

不意に本音を見つけてしまった日は、本当は、苦しくて堪らない。

それでも私は、生きたい。

 

あの夏から、どんなに先へと歩んでも、ゆらゆらと揺れ動く感情に翻弄されては、

時に叫び出したくなる衝動に駆られてしまう日もあるけど、

それでも私は、この人生を大切に生きることを選び取って行きたい。

 

あの日の朝は、改めて、こんな気持ちを確認する朝ともなりました。

 

これまでの私がそうであったように、

これからも、きっと私は何度でも、

不意に、本当は、の気持ちを見つけてしまうのだろうけれど、

その度に、そこに感じた痛みを咀嚼して、しっかりと感じ切ったのなら、

何度でも、あの朝と同じように、

しっかりと前を向き直して、私は歩んで行くよ。

 

あなたは、今はまだ逢えない人。

でも、きっといつかまた、逢える人だと信じているから。

 

 

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