拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

ホタル

あなたへ


近頃のあの子の様子には、目に余るものがあり、

ちょっと・・・

いえ、本当は、かなりの悩みどころでした。

一言で様子を伝えるなら、友達と遊んでばかり。


それはまるで、現実逃避をしているようにも、

あの子にしか見えない恐怖から、必死に逃げているようにも見えました。


あなたを見送ってから、間もなく、

あの子は、医療関係の仕事に就きたいと、言いました。
あなたみたいな人を助けたい。

そして、その家族の、心の痛みも、

全部、救ってあげられるような人間になりたい と。

 

そんな目標すらも、見えなくなってしまったように見えたあの子の事が、

とても心配になりました。


話をした方がいいのか、それとも、

しばらく、見守った方がいいのか、とても、迷いました。


あなたなら、どうするのかな。


そんな事を考えながら、数日後、突然に、話をする機会が出来ました。

 


きっと、今がとても楽しいんだね。


今がずっと続けばいい。そんなふうに思っているのかな。


その気持ちは、とても、よく分かるよ。


だって、お母さんもそうだったから。


でも、自分が、変わりたくなくても、
ずっと、このままでいたいって思っていても、
いつか、周りが、ひとり、またひとりって、変わっていくと感じる時があってね、

寂しいけれど、自分も、いつか変わらなくちゃいけない時が必ず来るんだよ。


そうやって、現実と向き合った時に、初めて、

自分には、何もないって事に、気が付いて、焦る時が来るかも知れない。


取り戻せる時間と、取り戻せない時間があって、

今、頑張れなかったら、後で、頑張ろうと思っても、

後回しにした分、今よりも何倍も努力しないと、追い付かない事もあるんだよ。


大人として、現実と向き合わなくてはいけない時間の方が、ずっと長くて、

努力するべき時に、努力しなかった代償は、

いつか、自分に返ってきてしまうんだと思うよ。


10年先、20年先に、後悔しないような時間の使い方が、出来たらいいね。


行きたい道に進めるように、よく考えて、

それでも、勉強は、自分に取って必要ではないと思うなら、頑張らなくてもいい。


あなたの人生は、あなたのものだから、
自分の、やりたいように、やりなさい。


後悔しないように、よく考えなさい。

 


それは、本当は、中学生だった自分に、伝えたい事だったのだと思います。


私の話を黙って聞いてくれたあの子は言いました。


自分が、何をしたいのか、

なぜ、勉強をしなくてはいけないのか、

行きたいと思っていた高校も、何で行きたいのか、

全部、分からなくなってしまった。
このままで、いられたらいいのに。
でも、いつか、絶対に、後悔する時が来るよね と。


あの子は、あの子なりに、悩んでいた事を知りました。

 


あれから間もなく、高校の説明会がありました。
色々な、高校の資料を見たり、話を聞いたり、
そんな中、あの子はまた、見失っていた自分を見つけたように見えました。


あなたなら、あの子に、どんなふうに、話をしたのか、

または、見守る方を選んだのか、答えは見つかりませんでしたが、
あの子と話が出来て、良かったなって思いました。


あの子は、将来、どんな道を選ぶでしょうか。


あの頃と同じ気持ちで、医療の道を選ぶのか。

それとも、小さい頃に、夢見た料理の道を選ぶのか。


新しく、別な道を見つけるのかも知れませんね。

 


あの子が、道に迷った時、私は、小さなホタルみたいに、

光を灯してあげられたら、いいなと思います。


あの子が、幸せな人生を歩んで行けるように。