拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あなたが最後に食べた私の手料理

あなたへ

 

あぁ、そっか

きっと、そういうことだったんだね

 

起こったばかりの不思議な流れを辿りながら、

ひとりで納得していたのは、昨夜の私です。

 

昨夜の私は、晩御飯に、

どうしても茄子料理が食べたいと思いました。

 

買い物へと出掛けた夕方の私は、全く違うメニューを考えていて、

それに沿った買い物をした筈なのに、夜になってから突然に、

どうしても今日、茄子料理が食べたいと思ったのです。

 

偶然にも、家には茄子がありました。

ほんの少しだけ面倒に思いながらも、私の中に浮かんだ、

どうしても今日、アレが食べたい、という気持ちを掻き消すことが出来ずに、

予定していたメニューの他に、茄子料理を準備することにしたのでした。

 

夕方の私は、全く別なものを食べたい私であった筈なのに、

食事を始めれば、何故だか茄子料理ばかりが進みました。

 

何故だか今日は、茄子料理が食べたかった日。

 

食事を終えて、片付けに取り掛かりながら、

不思議な流れであったと、ほんの少し前までの流れを振り返りながら、

やがて私は納得したのでした。

 

きっと、あなたが強く、

どうしてもあの、茄子料理を食べたいと、伝えてくれていたのだと。

 

昨夜の私が急遽作ることになった茄子料理は、

あなたが最後に食べた私の手料理でした。

 

あの頃の私は、料理が苦手で、日々の食事の準備に苦戦していた頃の私。

それ故に、あの日の私は、失敗作を食卓へと並べることになって。

 

まさかあの翌日に、あなたが入院することになってしまうだなんてさ。

 

入院当時には、ICUに入ってしまったあなただったけれど、

あの後、驚くような回復を見せて、

一般病棟へ移れることになって、

一時退院の予定まで、立てられるようになりました。

 

そんなあなたの姿に安堵しながら、私は、

あなたが帰って来たら、あの、茄子料理をリベンジすべく、

密かに練習をしていたのでした。

 

それなのに、

一時退院は叶わぬままに、あなたの容態は急変してしまって。

 

昨日までは、話が出来るあなただったのに、

昨日までは、あなたは笑っていたのに。

 

あなたは突然に、たくさんの管が通された姿にとなって、

温もりを感じる以外に、あなたを感じることは出来なくなりました。

 

ねぇ、あなた

一時退院するんでしょ?

あの、茄子料理ね、あれから練習したんだよ

上手に作れるようになったから、あなたにも食べてほしい

ねぇ、あなた・・・

 

泣きながら声を掛けた私の声を、

あの時のあなたは、ちゃんと聞いてくれていたのでしょうか。

 

あの時、ほんの僅かに、

あなたの口が動いたこと、今でもよく覚えています。

 

あれから、一度も目を覚ますことなく、

あなたは、あの、穏やかな笑顔を私たちに遺して、

この世界から、居なくなりました。

 

まさかあの、失敗作の茄子料理が、

あなたに食べて貰える最後の料理になるだなんてさ。

 

私は料理が苦手。

とは言え、他に、

あなたが気に入ってくれていた料理だってあった筈なのに、

どうして寄りにも寄って、あの、

失敗してしまった茄子の料理が、最後だったのだろう。

 

そう。あの茄子料理はさ、

体調が優れないと言っていたあなたが、少しでも元気になってくれたらって、

そんなふうに考えて作ったものでした。

あなたが、あの茄子料理が好きだと言っていたから。

 

思えば私は、これまでに、あの、茄子料理に対して、

どうしても、今日、食べたいと、

こんな強い衝動を覚えたことは、ありませんでした。

 

昨日の不思議な流れを改めて見つめてみれば、

そこには、あなたの力が働いていたと、

こんな解釈をすることが、実は一番自然であると、

私には、こんなふうに思えました。

 

あの夏から11年を掛けて、

しっかりと前を見据える私へと成長することが出来た今だから、

漸く伝えられるようになったあなたの想いでもあったのかも知れません。

ねぇ、あの茄子料理、今日、作ってよって。

 

乗り移る。

きっと今のあなたは、こんな不思議なことが出来るのだと、

こんな証拠は、あなたを見送ってから、幾つくらい集めて来ただろう。

 

昨夜の私が茄子料理にばかり箸を伸ばしていたのは、

実はあなたが食べていたからだと、今の私には、そんなふうに感じられました。

 

そして、突然であったにも関わらず、偶然、家に茄子があったのも、

あなたが作り出した必然であったのかも知れません。

 

昨夜の私が、突然であるにも関わらず、あの茄子料理を作ることが出来たのは、

あなたの命日を迎えるほんの少し前に、

あなたのお母さんが、野菜を送ってくれていたからでした。

 

こうして、此処までの流れを見てみれば、

あなたの命日には、あの、茄子料理を作ることが出来るようにと、

必要な材料が揃えられていたようにも思えてしまうのです。

 

あなたにも食べてほしい。

 

あの日の私の声は、きっと、

ちゃんとあなたの胸の中へと届いていてさ、

あの夏にいたあなたはきっと、あの日の私の声を、

この世界で、大切に集めてくれていたんだね。

 

 

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