拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

一文に込めたふたつの意味

あなたへ

 

そちら側で、仲間は見つけましたか。

これは、初めて、こうしてあなたへの手紙を綴った日に添えた一文です。

 

あの日の私は、この一文に、ふたつの意味を込めていました。

 

ひとつは、そちら側で、

新たな仲間を見つけることは出来ましたか、という意味。

そして、もうひとつは、

いつかのあなたが、一度だけ話して聞かせてくれた彼と、会うことは出来ましたかと、

こんな想いを込めていました。

 

あなたを見送ってからの私は、幾度となく、

そちら側でのあなたについてを思い描いて来ましたが、

あなたは、彼と再会することは出来たのだろうかと、

時々には、こんなふうにも想いを馳せてみるのです。

 

もしも、彼と再会することが出来たとするのなら、

あなたはきっと、楽しく過ごしてくれている筈だから。

 

あなたの大親友であった彼についての話を、私に話して聞かせてくれたのは、

私たちが出会ってから、どのくらいが経ってからのことだったでしょうか。

 

この指輪のこと、何も聞かないんだね

 

その話は、こんなあなたの言葉が始まりでした。

 

あの日のあなたが言った、この指輪、とは、

いつもあなたの小指についていたリングのことでした。

 

あぁ、うん、そうだね

 

あの日の私は、上手く言葉を見つけることが出来ないままに、

曖昧な答え方をしただけだったけれど、

それについてを一度も聞いてみようと考えたことがなかったのは、

そのリングをつけているあなたが、私にとっての、

あなたそのものであるような気がしていたからだったのだと思います。

 

曖昧な言葉を返しただけで、口をつぐんだ私に、

あの日のあなたが聞かせてくれたのは、そのリングに纏わる話でした。

 

これはね、友達とお揃いの指輪なんだ

 

あなたの親友を含む数人で遠出をした日に、

偶然、見つけたアクセサリー屋さんで、今日の記念にと、

皆でお揃いのアクセサリーを買うことになって。

 

皆がデザインを気に入ったこの指輪を買うことにしたのだと、

こんな楽しかった思い出を語ってくれたあなたでしたが、

楽しかった思い出を共に刻んだ筈のあなたの親友は、

そこから遠くない未来に事故に遭い、この世界からいなくなってしまったのだと、

あなたの話は、こんなふうに続いて行きました。

 

俺さ、アイツには、何でも話せたんだ

 

あなたの小指につけたリングは、

自分の胸の内の全てを見せることが出来た掛け替えのない友人との、

大切な時間が詰まったリングなのだと話してくれましたね。

 

こんなことを人に話すのは、初めてだよ

どうしてだろう

この指輪についてを誰かに聞かれても、絶対に誰にも話さなかったのにな

 

あの日のあなたの話は、私には話しておきたかったのだと、

こんな言葉で締め括られました。

 

一度だけ、小指につけたリングについての話を聞かせてくれたあれから、

幾つもの時間を重ねた私たちは、家族になって、

やがて、あの子が生まれて来てくれました。

 

ずっとその小指にあったリングをあなたが外したのは、

あの子が小学何年生の頃だったでしょうか。

 

これね、パパの宝物なんだ

大切にしてくれる?

 

ある日のあなたは、大切にしていたあのリングを外すと、

突然に、あの子へ贈ったのでした。

 

え?本当に良いの?

 

驚いた私の言葉に、あなたは、

どうしてか分からないけれど、あの子に持っていて欲しいと思ったのだと、

こんな話を聞かせてくれましたっけ。

 

その胸の内側にある、繊細で柔らかな部分を、私に見せたあなたと、

その胸の内側にある、繊細で柔らかな部分を、あの子に渡したあなた。

 

ねぇ、あなたは、そちら側で、彼に会うことは出来たのかな

 

あなたの顔を見つめながら、静かに問い掛けた私の中へと、

蘇ったふたつの記憶は、今になって、不意にひとつに繋がりました。

 

人は、この世界を去った後でも、

この世界にいる人の記憶の中で、生きることが出来るのだと、

こんな考え方があります。

 

あなたは、若くしてこの世界を去ってしまった彼が、

長くこの世界へ生きることが出来るようにと、

誰にも見せることがなかった部分を、私たちに託してくれたのかも知れないと、

今の私には、こんなふうにも思えました。

 

それは無意識の領域下でありながらも、きっと必然で。

 

あなたにとってのそれは、大切に想っていた彼への、

贈り物のようなものでもあるのかも知れないなって。

 

ねぇ、今頃のあなたは、

彼と一緒に、笑い合っているのかな。

 

 

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