拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

記憶を集める散歩の会

あなたへ

 

そうだ

もうすぐ出掛けるんだ

楽しみだな

 

夢と現実の間で、こんなことを考えていた私が、ふと目を覚したのは、

恐らく深夜の時間帯。

僅かに目を開けて、外が暗闇に包まれていることを確認し、

もう一度、目を閉じたのは、昨夜のことでした。

 

やがて耳元で鳴ったアラームを止めて起き出して、

外を確認すれば、綺麗な青空が見えて。

やはり今日は、あの計画を実行するに相応しい日であると、

ベランダに出て、もう一度、空を見上げたのでした。

 

子供の頃の私が見ていた景色の中を歩いてみようと、

こんな計画を立てたのは、先週末のことでした。

 

ゆっくりと過ごしながら、私が反芻していたのは、これまでに蘇った様々な記憶たち。

思えば、あの子が巣立ってからの私の中には、

ゆっくりと、記憶の断片たちが集まるようになりました。

 

幼少期の頃の記憶。

子供だった頃の記憶。

そして、大人になる前の記憶。

 

少しずつ、断片たちが蘇り、

やがて断片だったものが、少しずつ繋がる様子を見つめながら、

これまでの私は、自分のペースで歩み続けて来ましたが、

蘇る記憶を集めるのではなく、自分から集めに行けるとしたのなら、

私は、より早くに、本来の自分へと形を整えることが出来るのかも知れないと、

ふと、こんなことを考えたのです。

 

そうして私は、それなら、私が通っていた小学校辺りを歩いてみようと、

こんな新たなやり方を思い付いたのです。

 

題して、記憶を集める散歩の会、です。

 

あの日の私は、次の週末には出掛けようと計画を立て、

密かに、今日の日をとても楽しみにしていました。

 

今日は比較的、温かで、空がとても綺麗で。

記憶を集める散歩の会に相応しい日だと感じながら、青空の下を歩きました。

 

私が通っていた小学校の正門を眺めた後で、

ゆっくりと小学校の周りをぐるりと一周してみれば、

校舎は様変わりしたものの、校庭には、幾つかの懐かしいものが見えました。

 

やがて、学校の周りの景色へと視線を移せば、

見知らぬ景色の中に紛れるように、あの頃の私が見ていた景色が並んでいました。

 

あっ!ここのお宅、知ってる!

この建物、絶対に見たことがある!と、心の中で呟きながら、

ゆっくりと歩を進めれば、やがて思わず、

おぉ、と小さな声が漏れ出てしまったのは、

そこに、かつての私にとっての見慣れた看板を見つけたからでした。

 

こっ!この看板は!

 

思わぬ懐かしいものとの再会に、頬が緩んだまま、

込み上げる可笑しさを止めることが出来なかったのは、

あの頃の看板が撤去されずに残っていることを、

全く想像していなかったからなのかも知れません。

 

どの懐かしい景色よりも、私にとっての一番の衝撃は、

この看板だと、こんなふうに自分の中で纏めれば、

可笑しさを沈めることが出来ないままに、

笑みを浮かべたままで、やがて元の場所へと戻ったのでした。

 

時計を確認してみれば、然程、時間は経っていなく、

歩き足りなさを感じてもいた私は、次に、

私が通った中学校へ向かって歩き出しました。

 

やがて私の目に止まったのは、当時、新築だったアパートでした。

 

あの頃の私は、このアパートを毎日、横目に見ながら、

私もいつかは、こんなアパートでひとり暮らしをするのだろうかと、

大人になった自分を思い描いたりもしていたなと、

中学生になったばかりだったあの頃を思い返しながら、細い路地を抜けて。

 

中学校へと続く角を曲がったところで蘇ったのは、

変なおじさんと遭遇した日のことでした。

 

そう。その道は、

かつて、変なおじさんが出ると有名だった道でした。

 

変なおじさん、と言っても、特に危害を加えられる訳ではなく、

主に女子生徒へ向けて変な言葉を発しながら、

自転車で通り過ぎて行くだけの変なおじさんです。

 

彼は、私たちの中での有名人であったため、彼との遭遇の日は、

あの人なのかと、友人たちと爆笑したのでした。

 

中学校へと続く道は、まるで別世界であるかのように様変わりしていたのに、

私の中へと蘇った変なおじさんは、

私に景色を楽しむことをさせてはくれませんでした。

 

やがて中学校へと到着すれば、あの頃と、全く変わらないその景色に、

一瞬、目を見開きましたが、

どうにも、変なおじさんが、記憶を辿ろうとする私の邪魔をして、

何度でも、私の頭の中を自転車で通り過ぎて行くのでした。

 

懐かし過ぎる看板の発見と、

変なおじさんとの遭遇の記憶を集めたところで、

私の記憶を集める散歩の会は静かに終わりを迎え、

最後に、そのまま少しだけ足を伸ばして、お気に入りのお店へと寄り道をすれば、

偶然にも、手帳用の可愛いシールを発見した私は、

そのシールを買って、帰宅したのでした。

 

私が期待したものは、何ひとつ、見つけることができなかったけれど、

なんだか今日の散歩の大半は、笑ってばかりで楽しかったし、

思わぬシールとの出会いもあったから、今日は、これで良しとしておこうかな。

帰宅した私は、こんなふうに、今日の散歩を締め括りました。

 

記憶を集める散歩の会。

 

とても良い案だと思いましたが、その準備が整わなければ、

記憶の封印というのは、解かれないものなのかも知れませんね。

 

きっとまたいつの日か、その準備が整った時に、

不意に記憶が蘇って行くのでしょう。

そのペースは、自分では、決めることが出来ないものなのかも知れませんね。

 

 

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